愛 ページ22
｢──待てスザク｣
『───……止めるな、"親父"。覚悟は出来たと言った。俺は首を刎ねると言った。止めるな』
｢話をさせろ。…おれの娘ならこんな事で腹ァ立てんじゃねェ｣
……
数秒の睨み合いの末、俺は炎刀を解いた。
だが怒りは収まらない。
『…一つ貸しだからな』
｢あァ…悪ィな｣
親父殿の前から引く。
俺はまだ許したわけじゃない。本当だ。
…しかし誰だ、そんなホラを吹いたのは。
あのセンゴクとかいう奴か？
｢スクアード…おめェ仮にも親に刃物をつき付けるとは……飛んでもねェバカ息子だ！！｣
親父殿が渦蜘蛛に迫る。
早く最期をくれてやれ、俺はソイツが──
｢バカな息子を────それでも愛そう｣
親父殿は、渦蜘蛛を抱き締めた。
温かい声音と、体温と共に。
……はあ、さっきまでの俺が余っ程馬鹿みてェじゃねェか。
こりゃ敵わねェな。
親父殿が話の末、立ち上がって構える。
また大気にヒビを入れた。
その衝撃は凍りついた津波を砕き、塞がれていた退路を作る。
｢海賊なら！！信じるものはてめェで決めろォ！！！｣
つまり、逃げるも進むも考え次第。
逃げる…か、まあ選択肢には入ってないけどな、元から。
｢おれと共に来る者は命を捨ててついて来い！！！｣
｢ウオオオオオ！！！｣
親父殿がモビーディックから飛び降りる。
やっとか、さて…暴れたりなかった分は暴れてやろう。
膝をついた渦蜘蛛を見やる。
『…俺はお前を許したつもりは無いからな』
一言、それだけ残す。
｢行くぞォ━━━！！！｣
｢構えろォ！！暴れ出すぞ！世界最強の男がァ！！｣
いい緊張感だ、まずは麦わらと合流するとしよう。
俺も、親父殿に続いて船から飛び降りた。
｢"白ひげ"が動いたァ〜〜！！！｣
｢オヤッさんに続けェ〜〜〜！！｣
｢親父に道を開けろォー！！｣
恐らく渦蜘蛛を騙したのは海軍の誰か。
今俺は、海賊の次に海軍を嫌いになった。
性悪な、こちらの仲間を使ってこんな事を企むんだ。
何より許せない。
翼を纏って飛び上がる。
麦わらの下に向かった。
それから親父殿が続け様に地震を起こす。
行く道を塞ぐ巨人でさえもその威力には敵わず倒れる。
衝撃は巨人を超え処刑台に。
しかし何かによって弾かれた。
地震の影響は麦わらにも届く。
慣れていないようだ、氷の下に落ちかけている。
全くしょうがない。
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作者名：ゆず招き猫 | 作成日時：2021年1月20日 9時
