黒い ページ17
烏に森の中を先導される事、早数分。
少し怪しげではあるものの何故か着いて行かなければならないと、本能で悟った。
警戒は怠らない。何かの罠かもしれない。
どちらにせよ、奇襲が仕掛けられれば仕留めるまで。
案内されるがままに森を進むと、やがて拓けた場所にでる。
だがそこにいるのは俺と烏だけではなかった。
黒いコートと帽子を被った、長身の人。
そこに静かに佇んでいた。
｢…来たな。風の噂で聞いてるぜ、各島々を巡り傷を癒し、ある島では守護神としても崇められたそうじゃないか。流石は不死の象徴。善人に対して何とも慈悲深い｣
良く、ぺらぺらと喋るものだ。
こちらの事は知っている口か、俄然警戒心は上がる。
少しずつ森の方に後退る。
｢逃げなくていい、スザク。俺は自分でお前の事を調べて、お前が留まった島には全て立ち寄った。…やっと追い付いた、ようやく会えた｣
眼は見えない。
けど口元は見える。小さく笑みを称えていた。
『…俺はお前の事も知らない。初対面でよくそんな馴れ馴れしい口を聞けるな。…名乗れ、お前は何者だ』
｢…寂しい事言うなよ。俺はお前の、たった一人の"肉親"なのに｣
男は帽子に手を掛ける。
その帽子を、そっと外した。
初めて顔が見える。
右の眉から、左頬まで。古傷の目立つ、顔だった。
黒髪に、開かれた双眸は俺と同じ。朱い瞳。
｢…俺が誰か、本当に忘れたのか？｣
眉尻を下げて笑う顔に、酷く胸が痛んだ気がする。
コイツは、いや、この人は、知っている。
過去にも見た、脳裏に焼き付いた、あの最後の顔。
嘘だ、だって。
死んだと、思っていたのに。
『……にい、さん…？』
言葉が詰まる、それでも口にした、懐かしい単語。
男は腕を広げた。
頬に一筋の涙を流しながら。
｢おいで、───｣
口にした名前は、あの頃の名。
懐かしい名前、本当の名前。
思わず駆け寄って、その腕の中に飛び込んだ。
最初は声を押し殺した。でも耐えられなくなって、声を上げて泣いた。
変わらない、大好きだった兄の腕の中。
温かかった。懐かしかった、嬉しかった。
また、生きて会える何て、思いもしなかったんだから。
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セツ(プロフ) - これからも更新頑張ってください！応援しています！ (2021年1月12日 21時) (
レス) id: b28a5b6b48 (このIDを非表示/違反報告)
哀羅(プロフ) - 隠し名！！！めっちゃ気になる…っ！にしても隠し名がyrってめっちゃかっこいい！センスが光りますね〜！ (2020年11月28日 10時) (レス) id: 4b111e8b4e (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - すごい面白くて更新が楽しみです！！ (2020年11月13日 5時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)
哀羅(プロフ) - 即死級の技、鬼火！しかも青い炎とはマルコを連想させますね。先が気になる！ (2020年11月12日 15時) (レス) id: 4b111e8b4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆず招き猫 | 作成日時：2020年11月8日 13時
