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『…ねぇシチロウ君』
バ「何ですか?」
『私ね、やっぱり人間はいると思うんだぁ〜』
バ「…え?」
今日はシチロウ君と2人で図書室に来ている。空想生物学の好きな彼と架空の生物とされる生き物の話をするのはとても楽しい。
『いやぁ、先日画集を探しにここへ来てたんだけど、見たこともない絵画を見つけてしまったの』
バ「見たこともない…?そんなの、あって当たり前なんじゃ?」
『…確かにそう思うかもしれないけど、まずはこれを見て欲しい』
シチロウ君の前に先日見つけた画集を出して開く。すると、驚いたように目を開いてペラペラと絵画を眺め出した。
『……どう思う?私はこんな絵画、見たことないの。この絵画が存在してる以上、やっぱり人間はいるって思ったんだけど…』
バ「すごい!凄いですA先輩!!確かに、魔界の絵画には無い絵です!!」
魔界に存在する絵画において、人物画は勿論悪魔が描かれる。存在しないものはあまりに抽象的すぎて、正確に描く事など出来ないからだ。
もしも人間の絵を見たいと思うのなら、そういった資料を探すしかないのである。まぁそれも実に抽象的なのだが。
目の前に広がる画集は、どれも人間の絵ばかり。しかもとても繊細に描かれている。特に私が気に入った絵を見せると、シチロウ君の目はキラキラと輝きだした。
『この絵に描かれている人間…と思われる女性は、背中の大きく開いたドレスを着ているじゃない?人間には羽がないから、羽管が無い。だけどこの背中……凄く美しい…!!』
バ「だけどしっかり骨格もわかるし、肌の質感も分かる…!!」
『これは、実際に人間を見ていないと描くことなんてできないわ!!』
「『やっぱり人間はいる!!』」
2人とも考えていることは同じだったようで、ハモってしまった。そんな状況が面白おかしくて、顔を見合わせて笑った。
オ「おや?2人で何をしていたんですか?
『あ、オペラ君!』
オ「A、こんなところにいたんですね」
『もしかして私の事探してた?というか、私あんまりここには来ないんだけど…よく分かったね?』
オ「愛の力です」
『はいはい』
いつものように適当にオペラ君の囁く愛の言葉とやらを聞き流して、再び画集に目を移そうとすると、シチロウ君が不思議そうに質問してきた。
バ「…本当にお2人は恋人じゃないんですよね?」
『うん。だよねオペラ君?』
オ「まぁ…今はそうですね……」
バ「あっ…なるほど……」
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瀬奈 - カルエゴくんの頭文字とバラムくんの頭文字がバカになってるのウケるw (8月25日 0時) (レス) @page22 id: c6462a906b (このIDを非表示/違反報告)
ゆづき - めちゃめちゃ面白いです!これからも頑張ってください!応援しています (8月24日 10時) (レス) @page5 id: e818ab7371 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らい | 作成日時:2023年8月13日 2時