兎にも角にも。 (ページ10)

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漫画の中ではこういう場面で事が上手く運んで、マネージャーやってみない？えっ私がですか?やってみたい!!ってなるんだろうな。

『私なんて、何の役にも立ちませんから｡マネージャーなんて大切な仕事、とてもじゃないけど私には出来ません』

だけどここは現実で、私の意思だって発言だって介入する｡なんでもすると言っておきながら狡いとは思うが､私にはできないのだから仕方ない。

日｢香夜って、月島みたいな事言うんだな｣
『…へ？』

いつの間にか隣にいた翔ちゃんの口から出た言葉に、思わず間抜けな声が出てしまった。私が…蛍ちゃんみたい？

日｢なんかこう…1歩離れた所にいるって言うか…どこかで線を引いてるっていうか……｣
月｢…僕の事なんだと思ってるの？｣

ふむ、確かにそう言われればそうなのかもしれない。でも蛍ちゃんに似てると言われたのはなんか癪だ。慈悲の心すらないメガネノッポと同じにされては困る。

月｢絶対何か失礼な事考えてたよね、今｣
『…別に?』

くすくすと笑いながら下から蛍ちゃんを見上げると、少しムッとした表情で見下ろされる。…バレたか。

西「そこのジャージ女子!!」
『は、はい!!』

和やかになりつつあった空気の中で、私と同じくらいの背丈の先輩に大声で呼ばれた。それにしてもジャージ女子って…いや、確かにジャージ履いてますけども。

西「名を…何という…??」
『…ん?』
田「ノヤっさんナイス!!俺も聞きたかった!!」
『……』

大声で叫ぶ人は苦手だ。暑苦しいのも嫌だし、ガツガツ来る男は嫌い。でも……

『ふふ、ジャージ女子って何ですか?面白いことを言うんですね、先輩』

この人達は、嫌じゃない。

「「!!」」

『……香夜Aです｡お2人は?』

西「…西谷夕!!!」
田「田中龍之介ですコラァァァァ!!!」

熱血系、スポ根、そしてきっと女子にチヤホヤされたいと思ってるであろうこの2人。苦手だったはずのタイプでも、相手が自分に害を与えないと知る事で克服する時がある。今がきっとそう。だから、

『…田中先輩と西谷先輩ですね｡はい、ちゃんと覚えておきます』

多分これからも関わりはあるだろうし、名前は覚えておこう。蛍ちゃんの先輩だし、この人達は面白いし。

日｢…ひ、日向翔陽です!!｣
影｢影山飛雄です!!｣
『ふふ、2人はもう知ってるって』

ここには私をどうかしようとか、貶めようとか、そういう悪意を持ってる人は居ない。だからだろうか、何故か胸の中が暖かくて、安心するような気がした。