兎にも角にも。 (ページ49)

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月｢A、タオル｣
『はい！』

月｢A､キーパー重いでしょ。僕が持つから｣
『は、はい…?』

月｢A､｣
『はいはーい』

月｢Aー｣
『はい今向かいます!!』

……何が起きている?

日｢…今日の月島､やたらAばっか呼ぶよな｣
谷｢つまり私は用無し…!?｣
『大丈夫だよ、仁花ちゃんは十分チームの力になってるから…｢A｣……今行きマース』

今朝の件があってから、蛍ちゃんの様子がおかしい｡特に音駒との試合では余計に険しい顔つきになっている｡

黒尾さんとの会話の内容はよく分からなかったけど、蛍ちゃんを挑発しているような口調だったし、何か地雷でも踏まれたのかな？

灰｢かぐちゃんっ!!｣
『リエーフ君!!』
灰｢なんか疲れてんね!!｣
『え？あぁ…そう?』

ボトルを運んでいると休憩中のリエーフ君に話しかけられた。しかもズバッと疲れている事を指摘された。

…いやいや、選手のみんなの方が疲れてるだろうに、私が疲れててどうする。もっと頑張らなきゃ。

灰｢かぐちゃんさ、再来週の合宿は音駒のマネージャーやってくれるんでしょ!?俺、すっげー楽しみ!!｣
『あぁ…うん、そうだね…』
灰｢もしかして…猛虎さんの事気にしてる??｣
『たけとらさん…??』
灰｢モヒカンの人だよ!!｣

今初めて名前を知った。…やっぱり怖そうな名前だな。関わりたくない……あぁ､余計に気が重くなってきた。

灰｢大丈夫だよ、俺が武虎さんからかぐちゃんを守ってやるから!!｣
『…あ、ありがと』
灰｢友達だもん！俺に任せとけ!!｣

くぅ〜っ、やっぱり友達って響き、素晴らしい…!!

灰｢って､やべ!俺出番だ!!また後で話そうな!!｣
『うん!!』

友達ってなんて心強いんだろう｡リエーフ君が友達で本当に良かった。再来週の不安も、ほんの少しだけ和らいだような気がする。

緩む頬を抑えて試合を眺めていると、右肩に軽い衝撃が走る。見慣れたメガネが視界に入ったかと思えば、その次にデコピン､そして鼻をつままれた。

『な、何するの蛍ちゃん……』
月｢ちょっと距離近すぎるんじゃない?｣
『そう?でもリエーフ君は友達だし……』
月｢……｣

なんだその不服そうな顔は。蛍ちゃんは私の恋人でもなんでもない、ただの幼馴染なのだから私の交友関係にとやかく言われる筋合いは無いだろう。どうしてそんなに私が友達を作るのを嫌がるのだろう。

『あのねぇ、私は普通の女の子に戻ったの。もう蛍ちゃんに頼らなくたって1人でやっていけます!!』
月｢……は?｣