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東西東西。それではここで、幼い頃の私の話をさせて欲しい。
私の両親は同じ会社に勤めており、毎日仕事が忙しくて出張はよくあることだった。
それでも私の誕生日や運動会、お遊戯会には必ず休暇をもぎ取って家族の時間を作ってくれていたし、出張になった時は蛍ちゃん家に泊まっていたのであんまり寂しいと思ったことは無かった。
そんな時だ。なんと両親に海外での仕事が入ってしまった。
3人一緒に海外で暮らすという選択肢もあったのだが、当時の私が国外で暮らすことにギャン泣きして3日間部屋に閉じこもる程嫌がり、期間は1年だけという事もあって仕方なく東京に住む父方の祖母の家に居候する事になった。
『おてがみ書くからね!けーちゃんもおてがみちょーだいね!!』
月「…ん」
『とーきょーで"みかどさま"みつけてくるね!!!!』
月「それはやめて。Aには僕がいるデショ」
『だいじょーぶ!わたしの1ばんはいつもけーちゃんだけだから!!』
月「……あっそ」
しかし子供というのは忘れっぽくて飽き性な生き物である。東京に引っ越してすぐに私は初恋を体験し、ちゃっかりファーストキッスも捧げてしまったのである。
たった1年しか一緒に居なかったけれど、毎日日が暮れるまで遊んだ初恋の相手。かぐや姫ごっこにも付き合ってくれて、帝役をやってくれていた1つ年上の彼は、今では月バリに載るどえれぇ大物になっていた。
『……てな感じで、1年だけ東京で過ごしてたんです。その彼とは今でもメールでやり取りしてますよ』
雀「……ちょっと待って、情報量が多すぎない??」
『そうですか?』
一通り話し終えて、もういいですかと布団に潜り込もうとしたところを止められる。なんだ、もう話す事は無いぞ。
白「えっと…取り敢えずメガネ君は恋愛対象として見てないって事よね??」
『そうですね、蛍ちゃんはなんかこう…保護者?みたいな感じです』
雀「それで、本命は東京に居る…って事??」
『本命って……いえ、ただの初恋相手ですよ』
谷「Aちゃん、それ月島君は知ってるの?」
『知らないよ〜、絶対うるさいって分かってるもん』
清「そもそも、月バリに載るくらいって事は相当すごい選手なんじゃ……」
『えっと、確か"全国三大エース"って言われてたような……』
「「「「!?」」」」
『知りませんか?"佐久早聖臣"っていう選手なんですけど……』
白「…Aちゃん、それ絶対誰にも言っちゃダメだからね」
『?』
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作者名:らい | 作成日時:2024年2月12日 19時