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沢山の人が行き交う廊下を少し歩いた後,すぐ隣の教室の扉を開けてキョロキョロと目的の人物を探す。ありがたいことにその人物は大きな身長のおかげで特に苦労することなく見つけられた。
向こうもこちらに気づいたようで、その長い足ですぐに私の元へとやってきた。結構な身長差のせいで見下ろされるような形で向き合うものの、長年の経験もあってか大したことはない。
『蛍ちゃん!教科書返しに来た!』
月「…変な落書きとかしてないよね?」
そう言って怪訝そうにこちらを睨む蛍ちゃんこと月島蛍。彼こそがさっき翔ちゃん達の言っていた"メガネノッポ"だ。
私よりもはるかに大きい身長と、黒縁メガネ。……確かに、メガネノッポではある。
メガネノッポかぁ……。
『…んふw』
月「……何」
『ううん、何でもない!』
さっきの会話は内緒にしておこう。蛍ちゃん根に持つだろうし。ちなみに、蛍ちゃんの教科書にはちょっとだけ落書きしてある。この事も内緒にしておこう。これは後でバレてもこっぴどく怒られることは無いだろうけど、ほんの少しの遊び心というやつだ。
『そういえば蛍ちゃん、私さっき初めて蛍ちゃんと同じ男子バレー部の人と喋ったんだけど』
月「…は?」
『私が苦手なタイプの男の子じゃなかったからすぐ仲良くなっちゃった。あ、でも影山君とはまだ心の距離を感じるかも…「ちょっと待って」
"メガネノッポ"については伏せつつも、せっかく幼馴染のチームメイトと仲良くなったのだからそれだけでも共有しておこうかと何気なく翔ちゃん達の事を話したのだが……私が思っていた反応と違った。
少し驚いている、というよりは焦っている、と言った方が正しいのだろうか。普段は飄々としている彼が珍しくそんな様子を見せたので、こちらもつられて驚く。
月「…誰と、なんで、どういう経緯で仲良くなったの?」
『翔ちゃん達が…あ、日向翔陽くんね。彼が私の前の席の子に用事があったらしくて……って、何なのその反応は』
私の頭よりも遥かに高いところから聞こえたため息に顔をあげてみれば、蛍ちゃんは片手で顔を覆っていた。最悪だ、と呟いたのも私は聞き逃さなかった。
月「何でよりによって…ああ、なるほど。そういうことか……チッ」
『あの、さっきから追いつけないんですけど』
月「Aは分かんなくて大丈夫」
『…あっそ』
ここで深く掘り下げても蛍ちゃんには煙たがれるだろうし、これ以上の詮索はやめておこう。私って本当にいい友達だと思う。
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作者名:らい | 作成日時:2024年2月12日 19時