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『……』
右よし、左よし、もう一度右見て……よし、誰も居ない。
お風呂セットを抱えたままキョロキョロと辺りを見回して誰も居ない事を確認し、脱衣所へと駆け込む。……ふふん、計画通り。
『裸見られるの恥ずかしいもんね〜…貸切最高〜!!』
マネージャーの皆さんと一緒にお風呂に入るというなんとも贅沢なご褒美を自ら蹴ってしまったのは残念だが､これでも血涙を流して悩んだんだ。
『はぁ〜……五臓六腑に染み渡る〜』
湯船に浸かって一息つきながら今日一日を振り返る。今日も濃い一日だったなぁ……。
翔ちゃんと飛雄君と一緒に東京へ来て、チームの皆さんに受け入れてもらって､リエーフ君という他校の友達も出来た。何故かは分からないが､普通の女の子に戻ることも出来た。
今までの私では考えられないほど贅沢なこの一日に、嬉しくて頬が緩んでしまう。これからもこんな風に賑やかな毎日が待ってるのかな。
ふと俯いて､自分の胸元を見つめる。……うーむ、この後どうしようか。
私が血涙を流しても他の女子マネージャー達とお風呂に入らなかった理由。それは私のこの胸である。
普段は胸を小さく見せる下着を付けているが、お風呂では素っ裸にならなければならない。女子風呂お馴染みの胸のサイズ比べっこに巻き込まれるのはごめんである。特に雪絵さんとかイジって来そうだし。
だから1人で寂しく湯船に浸かっている訳だが､流石に寝る時まで胸を押さえ付けるのは良くないのでナイトブラをつける為､結局私のこの胸はごまかせない。
『……ま、女子だけならいっか』
『ふんふふんふふーん♪』
いい湯だったなぁ〜。長風呂しちゃった。後はもう寝るだけだし、これから女子の花園で恋バナなんかしちゃったり……
?「ご機嫌だねぇ〜」
『!?』
お風呂から上がって鼻歌を歌いながらスキップしていると、後ろから誰かに声を掛けられた。さっきまで誰も居なかったのに……幽霊??
『…お、お化けなんてなーいさ!!お化けなんて嘘さ!!』
?「いやいや、俺お化けじゃないから。ちゃんとまだ生きてますから」
『……生きてる』
生きている人間だった。ちゃんとこの世を生きてた。肩を叩かれて振り返れば、私よりもはるかに高い位置に頭がある高身長の男子が立っているではないか。
?「烏野のマネちゃんじゃん。今風呂上がったの?」
『えっと……その前に、貴方どなたですか??』
胡散臭い雰囲気は何処かで見た事があるけれど、でもこんな人いたっけ?
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作者名：らい | 作成日時：2024年2月12日 19時
