兎にも角にも。 (ページ35)

今日:147 hit、昨日:51 hit、合計:15,093 hit

33 ページ35

｢君可愛いね!烏野の新しいマネージャーなんだって？｣
｢大人っぽいね､1年生?｣
｢連絡先教えてよ〜!｣

………………何これ、地獄?

1日目の練習試合も終わり、夕食の準備をする為に食堂へと行こうとしていた所を呼び止められ、絡まれてしまった。

知らない人ばかりのこの合宿では､助けを求められる人も限られる。近くに烏野の皆は居ないし､どう切り抜けるべきか……｡

『えっと…困ります､そういうの』
｢あれ、怖がらせちゃった?大丈夫!俺､女の子には優しいから〜｣

ウザイ､しつこい｡なんでこういう本気で頑張ってる人達が集まる合同練習にこんな男が居るんだ。段々腹立ってきた。

『ほんと…迷惑なんで……｢何してんの?｣

私の言葉を遮るようにして後ろから声が聞こえ､驚いて振り返る｡やや上から聞こえたその声に視線を上げると、私よりもはるかに大きな男の子が不思議そうな顔をして立っていた。

蛍ちゃんと同じくらい…いや､蛍ちゃんよりも大きいなこの人｡確か音駒の…えっと……

灰｢ん?あーーーーー!!!｣
『!?』

暗くてよく見えなかったのだろう。ずいっと近づいてきた彼に顔をガン見されたと思えば、指を刺されて叫ばれた。…何だ?

灰｢烏野のマネージャーさん!?｣
『そ、そうですけど……』
灰｢ナンパっすか!?｣
『そう…なんですかね、よく分かんないんですけど』

知ってるかい?自分でこういう状況をナンパだと断言するのは自意識過剰みたいで少し恥ずかしいという事を。

しかしこの外国人くん(仮)、翔ちゃんのような純粋そうな、素直そうな雰囲気を感じる。もしかしたら助けてくれるのではという淡い期待を抱いてみるが、果たしてこんな無愛想な奴を助けてくれるのだろうか。

ええい、こういう時は勢いだ‼︎

私よりも遥かに高い身長の外国人くん(仮)に耳を貸すよう手招きし、初対面の男の子相手に震える手や声を我慢しながら勇気を出して囁いた。

『……た、助けて』
灰「‼︎」

次の瞬間、私の体が宙に浮いた。

『わっ⁉︎』
灰「この人､俺と結婚するんで手出さないで下さい‼︎じゃ‼︎」
『え⁉︎』

突然横抱きされたかと思えば、結婚宣言⁉︎
でもナンパを切り抜けるためとはいえ、そのハッタリは苦しいだろうと内心不安になっていると､外国人くん(仮)は回れ右をしてそのまま走り出した。…嘘でしょ、勢いで切り抜けられるのこういうのって。

それより、もっと大事な事に気づいてしまった。

『…あ!』

拒絶反応が出ていない‼︎