兎にも角にも。 (ページ30)

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月島side

蒸し暑い体育館の中で、ボールを打つ音とシューズの音があちこちから聞こえる。汗で額に髪が張り付くし、ペナルティばかりで体力も尽きそうだ。

あーーーーーー、ほんっと面倒臭い｡たかが部活なんだからここまでやらなくていいデショ｡あっつい、喉乾いた｡

そうして脳内で不満ばかり垂れながらもう何度目か分からないペナルティのフライングに取り掛かろうとすると、体育館の扉が開く音がした。

冴｢おっ、まだやってんじゃん｡間に合ったね、上出来｣

確か、田中さんのお姉さんだっけ。てことはあの単細胞達が来たのか｡これで少しはペナルティも減るかな。

てか王様のTシャツ、"セッター魂"ってなんだよ｡

田｢…なぁ、アイツは?｣
冴｢あぁ…長時間あの2人の話し相手してくれてたから疲れちゃったみたいで､今車の中で寝てる｡そろそろ起こしてやんねぇと熱中症になっちゃうんだけど……｣

田中さん、何話してるんだろう。ざっくりとした会話の内容から予測するに、もう1人この合宿に来ているのだろうか｡でも誰が?ウチにもう1人部員なんて居たっけ｡

猛虎｢うおおおおぉ!?｣

やっとの休憩で少し休んでいると、外から叫び声が聞こえた。
音駒の…何だっけ、山本さんだったか。田中さんに似てる人だ。休憩中なのによくそんなに騒げるよな……｡

猛虎｢なん、なんだ!?…烏野め、まだこんな隠し球を持ってたのか!?｣

山｢…どうしたんだろ、なんか騒がしいね｣
月｢さぁ、なんかもう一人来てるらしいよ｣
山｢へぇ〜…ツッキーは気になんないの?｣
月｢…別に｣

菅｢どしたー?｣
澤｢ウチにもう1人部員なんて居たか?｣
東｢いや、居ないはずだけど…もしかして俺らが知らなかっただけで、もう1人居たのか……?｣
西｢なんすかそれ、ウチに幽霊部員なんて居ませんよ旭さん!｣

なんだなんだと皆が外へと出ていく。休憩中なんだから､わざわざ外になんか行かずここで休んどけばいいのに｡

西｢うわああああああああああ!!｣

……本当に幽霊でも出たのだろうか。

谷｢…ねぇ日向､ここに誰か来てるの？｣
日｢え？｣

休憩中でも練習している単細胞その1に谷地さんがそう聞けば､キョトンとした顔をした後に呑気に笑いながらソイツは言った。

日｢香夜だよ｡あいつ、マネージャーになったんだ!!｣

…………は？

考えるより先に､体が動く｡

その時､どうして僕に先に言わないんだという文句より、彼女が他の奴に見つかってしまうという焦りの方が勝っていた。