兎にも角にも。 (ページ24)

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蛍ちゃんが家に来て早々、壁に追い詰められて尋問が始まった。

月｢ねぇ、僕に何か言うことあるよね？ねぇ？｣
『無いです｡無い。ありません!!』

ﾋｮｴｪ……すごく機嫌悪いじゃんかよぉ……｡

月｢…本当に無い?｣
『…無い』

マネージャーになったこと、蛍ちゃんには言ってないし言うつもりは無い。だってまだ内緒だもん。

知っているのは武田先生と清水先輩､飛雄君と田中先輩だけだ。田中先輩には頼まなきゃいけないことがあったし。

4人とも秘密をペラペラ喋る人じゃないからバレてないはず……なのに、蛍ちゃんのこの聞き方は何か知っている｡

『そ、そんな事より!お風呂沸いてるよ｡先に入る?それともご飯?』
月｢その前にA､ちょっと話をしようか｣
『ﾊｲ…』

無理だ、こういう時の蛍ちゃんは何を言っても逃がしてくれない。ただでさえ蛍ちゃんは身長が高くて威圧感半端ないのに、余計に圧をかけられては圧死してしまう。ここは素直に従うか……｡

月｢携帯､出して｣
『へ？』
月｢早く｣
『は、はい』

慣れた手つきでポチポチと私の携帯を操作する蛍ちゃんの目は死んでいる｡ロボットみたい｡一体何なんだ…?

……あ、飛雄君とのやり取り見られたらまずいかも。マネージャーの事とか､東京遠征の事とかバレちゃう…｡

月｢……ﾁｯ｣
『……』
月｢あのさ､｣

深い溜息の後に舌打ちと怒気を含んだ声色｡相当お怒りだ。そしてバレたな､うん。結構楽しみにしてたのにな。

月｢王様といつ連絡先なんか交換したの｣
『…え？』

予想外の一言に目が点になった。……え、それだけ？マネージャーの事､バレてない…?!

月｢僕の知らないとこで､なんで王様なんかと連絡先交換してんの｣
『王様って…飛雄君の事?』
月｢……は？｣

ピシ、と音がしたような気がした。空気がピリつくあの音だ。

月｢いつの間に下の名前で呼ぶようになったの?｣
『普通に今補習の勉強マンツーマンで教えててよく話すから…』
月｢……｣

……何か言ってくださいよ。怖いんだよ!!

『そ、そういえば蛍ちゃんって飛雄君の事王様って呼ぶんだね』
月｢…あぁ、まぁ、うん｣
『なんかあれだね、王様って…古典だと帝みたい!!』

その瞬間､蛍ちゃんの拳が壁に強く当たった。壁に穴が空くんじゃないかと思うくらい､それは強く｡…何か地雷踏んだかも?

月｢帝とか…まだそんな事言ってんの?そんなの居ないから｣
『…蛍ちゃん?』
月｢……絶対、すぐ飽きるに決まってる｣