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月「…香夜サン」
『あれ?蛍ちゃんどうしたの、いつもなら苗字で呼ばな……あ』
明後日から東京遠征という今日の放課後、鞄に荷物を詰めているといつの間にか私の目の前には見慣れたノッポが私の上に影を作っていた。
普段は名前で呼ぶのに、蛍ちゃんは偶に苗字+さん付けで呼ぶ事がある。それはつまり蛍ちゃんの機嫌が悪い時であり、しかも私が関連している時だ。
月「今日そっち泊まるから。風呂もそっちで入るから」
『は、はぁ……ご飯はこっちで食べま「食べる」…はい』
蛍ちゃんが泊まりに来るなんて別にいつもの事だし大したことは無い。…でもなんか今回は様子がおかしい。
谷「Aちゃん、月島君が泊まりに来るの?」
『え?うん』
谷「…ご家族は?」
『2人とも忙しくって、帰ってくるの遅いんだ〜』
谷「…ごめん、嫌な事聞いたよね?」
『全然大丈夫!』
実際、私の両親は仕事で忙しくて家を空けることが多いけれど、学校の行事や誕生日の時は絶対に休みを取ってくれるし、長期休暇には旅行にだって行くくらいだから私は恵まれている。
『それに、蛍ちゃんが家に泊まりに来る事はよくある事だから』
谷「……妊娠!?」
『大袈裟だよ仁花ちゃん』
仁花ちゃん、天地がひっくり返ってもそれは無いよ。
だがしかし、非常にまずい状況だ。一刻も早く家に帰らねば。そして蛍ちゃんが家へ来る前にアレを隠さなければ。
『じゃ、私急がなくちゃ!またね仁花ちゃん!!』
谷「うん!!またね!!」
そうだった、家には烏野のあの真っ黒なジャージがあるんだった。
清水先輩にはマネージャーになった旨を伝えたので東京遠征についてくることも知っている。そしてそれまで私の入部を内緒にしていることも。
マネージャーになると伝えた時はあのどえれぇ美人が抱きついて来たものだから、それはそれはびっくりした。危うく召されるかと思った。
そしてその日の内にジャージを渡され、何故そんなことが可能なのかと問えば最初から私の分を用意していたのだとか。全く、美人の考えることは恐ろしい。
一通り掃除も終わり、ジャージも棚の奥の方にしまって絶対にバレないように隠した。
何故か分からないが蛍ちゃんの機嫌が悪かったので帰りにショートケーキも買ってきた。お風呂も沸かしてある。私って本当に良い奴。
月「……ただいま」
『おかえり!』
月「…香夜サン」
うーわ、めっちゃ機嫌悪い……
『な、何でしょう?』
月「僕に何か言うことあるよね?」
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作者名:らい | 作成日時:2024年2月12日 19時