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私はいつだって、他人が怖いし他人の目ばかり気にしてしまう。他人を信用してないしきっといつか裏切ると信じてる。
絶対なんて絶対有り得ない。
影「香夜さんは烏野の力になります。絶対に」
『…っ、』
影「俺が香夜さんに力を貸しますから、香夜さんも烏野に力を貸して下さい」
『あ…』
強くも弱くもない力でキュッと握られた手は震えていなかった。寧ろ暖かくて、安心する。
絶対なんて絶対有り得ないのに、影山君の言葉は妙に信憑性があった。影山君が心から信じていると分かるから、信じない方が失礼にあたる。
影「…あ、すみません!勝手に手握って…」
『待って』
別に、心にグッときたとかそんなんじゃない。ただ単純に、この人は大丈夫だと分かったから。この人は私を見捨てないし、きっと立ち止まっている私の背中を押してくれる人だと分かったから。
離れようとした手を今度は私がキュッと握り返す。1つ深呼吸を挟み、その手を自分の頬へと持っていくが体が震えることは無い。
……2人目だ。
影「あ、あの香夜さ…」
『あのね、影山君』
『今はだいぶマシになったけど、やっぱり今でも男の子は怖い。…もしかしたら、チームの皆さんの邪魔になるかもしれない。でも、』
『……マネージャー、やりたいの』
影「!」
上手く笑えているだろうか。悲しくも苦しくもないのに、何故か泣きそうだ。胸の奥が暖かくて、いっぱいになる。
『私が烏野の皆さんの力になれるかは分からないけれど、私のやれる事は全部する。だから、影山君も私に力を貸してくれる…?』
影「…はい!」
前のめりになって元気な返事をした影山君にくすりと笑みがこぼれる。キラキラとした瞳が嬉しそうに輝いていて、まるでプレゼントを貰った子供みたい。
『…じゃあ、後で武田先生の所に行ってくる。その前に影山君、連絡先教えてくれる?』
影「うっす!」
スカートのポケットから携帯を取り出し、お互いの携帯同士を近づけて赤外線で連絡先を交換すると、新しい連絡先には"影山飛雄"が追加された。
『よし、じゃあ何かあったら連絡するね。あと…』
向かいに座る彼に手招きをし、私も少し身を乗り出して耳元へと顔を近づける。そして周りに聞こえないように、そっと囁いた。
『私が烏野のマネージャーになる事、皆にはまだ内緒ね。……飛雄君』
影「…は、はい」
『ふふ、勉強再開しよっか』
影「……うす」
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作者名:らい | 作成日時:2024年2月12日 19時