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あれから何故か部員全員の自己紹介タイムが始まり、少し戸惑いはしたものの楽しい時間を過ごした。
練習も見学させてもらって、翔ちゃんと影山君のコンビが本当にすごい技を見せてくれた。人ってあんなに跳べるんだな、人体の不思議だ。
どえれぇ美人の先輩は清水潔子さんというらしい。名が体を表すって多分このことだと思う。でもあんな美人に熱い眼差しでマネージャーに勧誘されたのは困った。危うくその場で入部届に名前を書くところだった。
結局部活が終わるまで私は仁花ちゃんと一緒に見学をしていて、蛍ちゃんと2人で暗い夜道を歩くのは久しぶりだった。
月「……珍しいね、Aが笑うなんて」
『ちょっと、私のこと感情を持たないロボットだと思ってるの?』
月「……ロボットって笑うんだね」
『は!?私だってね、ちゃんと人の心があるんです〜!』
私の事をロボットだと言ってからかう蛍ちゃんに肘で攻撃するが、涼しい顔をして鼻で笑われる。よーし、今日から君の名前はメガネノッポだ。
月「…マネージャー、やるの?」
『…どうだろ、分かんない』
さっきまで下らない会話で空気が緩みきっていたというのに、急に真面目な顔をしてそう聞かれた瞬間に上手く答えられなくて目を逸らしてしまう。
……確かにあの場所は楽しかった。マネージャーになった自分を想像して、案外いいかもしれないと思った。だけど。
『やっぱりまだ、怖いよ』
月「……あっそ」
男子バレー部の皆さんは大丈夫だったけれど、じゃあ他の男子も大丈夫かと言われたらそうではない。
胡散臭い陽キャは未だに苦手だし、私を"そういう目"で見る卑しい男も嫌い。これは自惚れでもなんでもなく、女性に生まれた人間としての尊厳が傷つくのが怖いからである。
月「君のソレを無理に克服しろとは言わないけどさ、僕はAがマネージャーするの、結構似合うと思うよ」
『…蛍ちゃん、そんな事思ってたの?なんか意外』
蛍ちゃんは私が男子と関わる事をあまりよく思っていない。過去の事があるから心配しての事なのだろうが、ちょっとした日直とか委員会での付き合いなら大丈夫だと言ってもそれさえお叱りを受けることがあるのに。
月「…正直最初は焦ったよ。Aがあんな厄介なのに見つかったから」
『…もしかして翔ちゃんの事言ってる?』
月「同じ部なら僕の目の届く範囲だし、煩い人ばっかだけど、Aに危害を加えるような人間は居ないからね」
月「やりたいんならやれば?」
『…考えとく』
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作者名:らい | 作成日時:2024年2月12日 19時