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『……おかしい』
胸がザワザワして、落ち着かない。何故か胸が締め付けられるように苦しくて、急に泣きそうな感覚に襲われる。
他の悪魔の前で醜態を晒すことなんてできず、
ふと、ポケットの中にしまっていたス魔ホが鳴った。
『……はい』
《A!今すぐ帰って来なさい!!》
『へ?』
《ナベリウス家から連絡が入って……》
通話越しに聞こえる両親の声は焦っていて、動揺している。一体何があったのかと聞く前に、ゴトン、と鈍い音を立ててス魔ホが床に落ちた。
そういえば今日は少し体が重かったかも。それに頭も痛かった。お昼休みに鎮痛剤は飲んだんだけどなぁ……。
ぐらぐらと視界が揺れてまともに立つ事が難しくなり、ふらふらと歩を進めることしかできない。
「だ、大丈夫ですか?」
『えぇ…気にしないで……』
声をかけてくれた女子生徒を心配させまいと微笑むけれど、正直すごくしんどい。
「あれ、ティターニアさんじゃね?」
「うっそ、ちょーラッキーじゃん!!」
「顔色悪くない…?」
「誰か医務室に……」
嗚呼、なんて惨めで恥ずかしいのだろうか。
お願いだから誰も見ないで。気にしないで。…こんなに弱くて情けない私の事なんか、放っておいて欲しい。
段々と視界が滲み、立って居られなくなり、大勢の前でついに倒れてしまった。
……と、思っていた。
カ「おい!しっかりしろ!!」
『あ…なんだ、カルエゴ君か……』
あと少しで頭をうちつけるかもしれないというところで、カルエゴ君が支えてくれた。
あの子とはどうなったのかな、もしかして置いてきちゃった?…駄目じゃない、レディは繊細なんだから。
少し滲んだ視界から見えるカルエゴ君は焦っている様子で、大きくて冷たい手のひらが額に触れると、ひんやりしていて気持ちよかった。
『ひゃ…』
カ「……熱い」
あれ、怒ってるの?と口にしようとしたけれどそんな元気はなくて、ぼーっとカルエゴ君を見つめていると、ふわりと体が浮いた感覚がした。
カ「シチロウからお前の様子がおかしいと聞いて来てみたら…何故黙っていた?」
『こんやく…はき、のために……』
カ「……話は後で聞く。今は寝てろ」
『ん……』
カルエゴ君に促されるまま目を閉じれば、ザワザワと騒がしい音も、好奇心に満ちた視線も感じなくなった。
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らい(プロフ) - あまねさん» 素敵なコメントありがとうございます!読者の皆様がカルエゴ先生のお嫁さんですので、楽しんで頂けたら幸いです(ー̀֊ー́˶ჱ̒ (5月5日 23時) (レス) id: 686171bb39 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - およめさんんんんんんんんんかわあいいい (5月4日 16時) (レス) @page36 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
らい(プロフ) - 悠鱸さん» ありがとうございます!!最近は忙しくてサイト覗けていなかったのですが、こちらでもコメント下さって凄く嬉しいです!是非今後ともよろしくお願い致します(^_ _^) (1月21日 17時) (レス) id: 686171bb39 (このIDを非表示/違反報告)
悠鱸(プロフ) - やっぱりスゥッとお話が入ってきますね!?それほど語彙力があるというか、長さがちょうどいいと言いますか、吸収しやすいと言いますか…。あの…はい、好きです、。めちゃ好きです…好き以外の言葉が出てきません、それぐらい好きです、笑 完結するまで見まくります (1月21日 10時) (レス) @page21 id: 1e852fcc4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らい | 作成日時:2023年12月13日 12時