検索窓
今日:43 hit、昨日:26 hit、合計:13,768 hit

55 ページ8

『……おかしい』

胸がザワザワして、落ち着かない。何故か胸が締め付けられるように苦しくて、急に泣きそうな感覚に襲われる。

他の悪魔の前で醜態を晒すことなんてできず、変身(メタメタ)で姿を消したままズンズンと廊下を歩いていく。

ふと、ポケットの中にしまっていたス魔ホが鳴った。

『……はい』

《A!今すぐ帰って来なさい!!》
『へ?』
《ナベリウス家から連絡が入って……》

通話越しに聞こえる両親の声は焦っていて、動揺している。一体何があったのかと聞く前に、ゴトン、と鈍い音を立ててス魔ホが床に落ちた。

そういえば今日は少し体が重かったかも。それに頭も痛かった。お昼休みに鎮痛剤は飲んだんだけどなぁ……。

ぐらぐらと視界が揺れてまともに立つ事が難しくなり、ふらふらと歩を進めることしかできない。

変身(メタメタ)も維持出来なくなって、すれ違う生徒達には声をかけられた。

「だ、大丈夫ですか?」
『えぇ…気にしないで……』

声をかけてくれた女子生徒を心配させまいと微笑むけれど、正直すごくしんどい。

「あれ、ティターニアさんじゃね?」
「うっそ、ちょーラッキーじゃん!!」
「顔色悪くない…?」
「誰か医務室に……」

嗚呼、なんて惨めで恥ずかしいのだろうか。

お願いだから誰も見ないで。気にしないで。…こんなに弱くて情けない私の事なんか、放っておいて欲しい。

段々と視界が滲み、立って居られなくなり、大勢の前でついに倒れてしまった。







……と、思っていた。

カ「おい!しっかりしろ!!」
『あ…なんだ、カルエゴ君か……』

あと少しで頭をうちつけるかもしれないというところで、カルエゴ君が支えてくれた。

あの子とはどうなったのかな、もしかして置いてきちゃった?…駄目じゃない、レディは繊細なんだから。

少し滲んだ視界から見えるカルエゴ君は焦っている様子で、大きくて冷たい手のひらが額に触れると、ひんやりしていて気持ちよかった。

『ひゃ…』
カ「……熱い」

あれ、怒ってるの?と口にしようとしたけれどそんな元気はなくて、ぼーっとカルエゴ君を見つめていると、ふわりと体が浮いた感覚がした。

カ「シチロウからお前の様子がおかしいと聞いて来てみたら…何故黙っていた?」
『こんやく…はき、のために……』
カ「……話は後で聞く。今は寝てろ」
『ん……』

カルエゴ君に促されるまま目を閉じれば、ザワザワと騒がしい音も、好奇心に満ちた視線も感じなくなった。

56→←54



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (53 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
146人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

らい(プロフ) - あまねさん» 素敵なコメントありがとうございます!読者の皆様がカルエゴ先生のお嫁さんですので、楽しんで頂けたら幸いです(ー̀֊ー́˶ჱ̒ (5月5日 23時) (レス) id: 686171bb39 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - およめさんんんんんんんんんかわあいいい (5月4日 16時) (レス) @page36 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
らい(プロフ) - 悠鱸さん» ありがとうございます!!最近は忙しくてサイト覗けていなかったのですが、こちらでもコメント下さって凄く嬉しいです!是非今後ともよろしくお願い致します(^_ _^) (1月21日 17時) (レス) id: 686171bb39 (このIDを非表示/違反報告)
悠鱸(プロフ) - やっぱりスゥッとお話が入ってきますね!?それほど語彙力があるというか、長さがちょうどいいと言いますか、吸収しやすいと言いますか…。あの…はい、好きです、。めちゃ好きです…好き以外の言葉が出てきません、それぐらい好きです、笑 完結するまで見まくります (1月21日 10時) (レス) @page21 id: 1e852fcc4a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:らい | 作成日時:2023年12月13日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。