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静まり返った会場に、ヒールの音が響く。

張り詰めた空気と、多くの聴衆から向けられる視線。

呼吸の仕方を忘れそうで、少しでも気を緩めれば立っていられない。



顔を上げて、胸を張って、とびっきり綺麗に笑って。

この場にいる全員を魅了させてみせる。大丈夫、きっと上手くやれる。

私は、妖精(ティターニア)だから。










ピアノの前でカルエゴ君と一緒に礼をし、そっと鍵盤を撫でる。隣に座るカルエゴ君の方を見れば、綺麗なバイオレットの瞳にはクラスメイト達の手によって綺麗に着飾られた私が映る。

これまで沢山練習したのは私だけじゃない。厳粛なカルエゴ君の指導についてきたクラスメイト達の努力を、決して無駄にしてはいけない。

"大丈夫、絶対に上手くやってみせる"と、もう何度目か分からない暗示をかけて肩の力を抜き、私は指を動かした_________










私は自由でありたい。私は選ばれる側ではなく、選ぶ側になる。絶対に誰かの言いなりにならない。恋をするならきっと…

まだ見ぬ誰かと、燃えるような恋がしたい。

毎日のようにそう願っていた。だから優秀であろうとした。私より優れた殿方じゃないと婚約なんてできないでしょう?と、両親を困らせた。

そんな努力も、ナベリウスという名門の前では無意味だった。その時、私は初めて逃げられないとはこういう事を言うのだなと、ひどく冷静にそう悟った。

立派な庭園で出会った2人は、長い間一緒に居た。何をするにも一緒で、誰よりも心を許した関係。誰の介入も出来ない、お互いがお互いにとって唯一無二。

初めて出会った時に私を無能と罵った彼は、いつからか私に好意を寄せてくれていた。私も最近になってようやく彼を想う気持ちを自覚したけれど、きっと随分前から私は彼に恋をしていたのだと思う。

"逃げたい、逃がして、もう苦しいの"
何度も吐き続けたその言葉は、確約された未来に愛など無いと考えていたから。想い合ってもいないのに、責務だけを強要されるなんて、死んでしまった方がマシだと思っていたから。

だけどどうだろう、私はまだ見ぬ誰かじゃなくて、ずっと一緒に居たたった1人に恋をした。

ふと、演奏中にカルエゴ君の横目をチラリと見た。ピアノを弾く横顔は真剣で、でも少し楽しそうだった。





気づけばクライマックス。視界が滲み出して、胸が苦しくなる。

お願い、どうか終わらないで。ずっとこうして2人で笑ってたいの。あわよくばその先も、ずっと彼の隣に_________

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らい(プロフ) - あまねさん» 素敵なコメントありがとうございます!読者の皆様がカルエゴ先生のお嫁さんですので、楽しんで頂けたら幸いです(ー̀֊ー́˶ჱ̒ (5月5日 23時) (レス) id: 686171bb39 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - およめさんんんんんんんんんかわあいいい (5月4日 16時) (レス) @page36 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
らい(プロフ) - 悠鱸さん» ありがとうございます!!最近は忙しくてサイト覗けていなかったのですが、こちらでもコメント下さって凄く嬉しいです!是非今後ともよろしくお願い致します(^_ _^) (1月21日 17時) (レス) id: 686171bb39 (このIDを非表示/違反報告)
悠鱸(プロフ) - やっぱりスゥッとお話が入ってきますね!?それほど語彙力があるというか、長さがちょうどいいと言いますか、吸収しやすいと言いますか…。あの…はい、好きです、。めちゃ好きです…好き以外の言葉が出てきません、それぐらい好きです、笑 完結するまで見まくります (1月21日 10時) (レス) @page21 id: 1e852fcc4a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らい | 作成日時:2023年12月13日 12時

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