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「お嬢様、お体はどうですか?」
『…うん、だいぶ楽になったわ』
窓の外を見ながら、使用人にそう返事する。
解熱剤も飲んだし、食欲もまぁまぁある。倒れた時よりも随分楽になっていて、万全になるのもそう時間はかからないだろう。
『…ごめん、ちょっと蒸しタオルを用意してくれる?』
「はい、承知しました」
『ありがとう』
手鏡をドレッサーから取り出してよく自分の顔を確認してみれば、泣き腫らした目元が目立っている。
「…A?」
『…どうしたの、お母様、お父様』
手鏡を置いて振り返れば、両親が私を心配して様子を見に来てくれていた。娘の情けない姿に呆れただろうか。
「…辛かったわね。でもこれからは貴女は自由よ」
「……長い間、よく頑張ったな」
『うん…』
本来なら、婚約破棄されたとしてもティターニアの女として他の貴族に嫁ぐべきだ。現に、噂を聞きつけた他の有力貴族が私に縁談を持ちかけている。
だけど心優しい両親のおかげで、それは全て断って貰っている。私にも自由に添い遂げる殿方を選ぶ権利が与えられたのだ。
「Aちゃん」
『あ…叔母様……』
ここに居ないはずの叔母様まで、わざわざ駆けつけて来てくれたらしい。ぎゅっと優しく抱きしめられた温もりで、また視界が滲む。
『お母様、お父様…叔母様と2人にしてくれる……?』
私の一言に対して両親は何も言わずに、そっと部屋の扉を閉めた。
「…ゆっくりでいいから」
『……ありがとう』
それから、話せる限りのことは全て話した。
以前から彼を意識し始めていたこと。叔母様が紹介してくれた女の子に嫉妬してしまったこと。……そして、その感情に蓋をしていた事。婚約破棄が決まった後にその感情に気づいたこと……。
『……失恋って、こんなにも辛いものなのね』
「Aちゃん…」
ポロポロと涙が溢れて止まらない。どうして、向けられた好意に素直に喜ばなかったのだろう。失ってから気づくなんて愚かで、惨めだ。
「今はいっぱい泣いて良いんだよ」
『うっ…うぅ……』
よしよしと優しく背中をさすられて、さらに涙が出る。何度も何度も拭って、涙が枯れるほど泣いた。
「…落ち着いた?」
『…うん、なんとか』
「いい?女は男で男の記憶を塗り替えるのよ!!」
『えぇ…(困惑)』
「だからねAちゃん。次に恋した相手には素直になればいいのよ」
『…素直に』
「そう!だって私の姪っ子は世界一可愛いもの!!」
『ふふっ…ありがとう、叔母様』
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らい(プロフ) - あまねさん» 素敵なコメントありがとうございます!読者の皆様がカルエゴ先生のお嫁さんですので、楽しんで頂けたら幸いです(ー̀֊ー́˶ჱ̒ (5月5日 23時) (レス) id: 686171bb39 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - およめさんんんんんんんんんかわあいいい (5月4日 16時) (レス) @page36 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
らい(プロフ) - 悠鱸さん» ありがとうございます!!最近は忙しくてサイト覗けていなかったのですが、こちらでもコメント下さって凄く嬉しいです!是非今後ともよろしくお願い致します(^_ _^) (1月21日 17時) (レス) id: 686171bb39 (このIDを非表示/違反報告)
悠鱸(プロフ) - やっぱりスゥッとお話が入ってきますね!?それほど語彙力があるというか、長さがちょうどいいと言いますか、吸収しやすいと言いますか…。あの…はい、好きです、。めちゃ好きです…好き以外の言葉が出てきません、それぐらい好きです、笑 完結するまで見まくります (1月21日 10時) (レス) @page21 id: 1e852fcc4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らい | 作成日時:2023年12月13日 12時