被食者にだけはなりたくない。

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帰宅早々ウィッグを外し、ネクタイを緩め、シャツのボタンを外してぽいぽーい、と脱いだ服をその場に投げる。

すぐにお風呂へと駆け込んで汗を流し、ヘアケアやスキンケアもいつものように念入りに。

数年前から伸ばし始めた髪をしっかりと乾かせば、シャンプーのいい香りが鼻腔を掠める。

キラキラとしたアイシャドウと長いまつ毛、三日月に引いたアイライン。髪は緩く巻いて、少し甘い香りの香水を付ければ、ごくごく普通の女の子である。

『よし!今日もいい感じ!!』



















『こんばんは〜』
「お！お疲れ〜」
『お疲れ様です〜』

大事な用事。……そう、副業である。

金の亡者たるもの、稼げるうちに稼いでおかなければ。

週2でキャバクラで働き出してから、早数年。
女の姿で夜の街を歩いていた時にスカウトされたのをきっかけに、割といい労働環境でがっぽりお金を稼いでいる。

「シャル〜!」
『はーい!!』

ちなみに源氏名はシャルトリューから取ってシャルである。だって猫派だもの。

ボーイさんに呼ばれ、高いヒールで音を鳴らしながらお客さんの元へ向かう。

接客業はとにかく笑顔とトーク力!!新規のお客さんらしいし、指名貰えたらいいな〜…

『失礼しま〜す……え"』
オ「は？」
イ「ん？」

……目の前に広がる光景は幻覚か?

席に座っているのはオペラとイルマくんである。
せっかく作った自慢のにっこり笑顔も、2人を前にすると引きつってしまった。

『お、お兄さん達…こういうお店は初めてですか〜?』
イ「はい!今日は頑張ってお金を稼いだので…」
『へぇ〜…ソーナンダー……』

状況を整理させて欲しい。

…えっと、確か今日カルエゴさんに追い出されてたよね？お金稼げなかったらなんとか〜って。しかも666万ビル。
え、もしかして本当に一日で稼いじゃったの？しかもお金余ったの？嘘でしょ?

そして問題は店だ。ここはバビルが用心棒を請け負っている店じゃない。高級でお客を選ぶ所だし、普通はバビルの息がかかっている店を選ぶのだけれど。というかイルマくん、君未成年だよね!?

『えっと、お兄さん達は何飲みます〜?』
オ「……」

ﾋｮｴｪ……視線が痛え……。

イ「あ、僕はオレンジジュースで!未成年なので……」

でしょうね!!知ってる!!

『そ、そうなの?じゃあこんなとこ来ちゃ駄目じゃな〜い!!』
イ「でも、オペラ…僕の護衛が"面白い所"って…ね！」
オ「……｣

…………誰か助けて(泣)

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