愛を伝えるには【mmab】 (ページ11)

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「すみません。嘘つきました」

人気のないところまで来て、会話が聞こえそうな範囲に人が居ないことを確認して、阿部くんが足を止めた。

阿部くんがこっちを振り返ると同時に頭を下げた。まだ阿部くんの顔を見たくなかった。

「…そんなの分かってた。頭上げて」

さっきまでと違う口調にどきりとする。ゆっくり頭を上げると、阿部くんは少し怪訝そうな顔で俺を見ていた。

「用件は何？」

「これ、返しに来ました」

ポッケから封筒を取り出すと、阿部くんは顔を歪めた。

「なにこれ」

「この前のお金の残りです。かなり多く置いて行っていたので」

「返されても困るんだけど。意味、分からなかった？」

「分かりました。でも俺はこういうの嫌です。それにルール、あったじゃないですか」

なかなか受け取ろうとしない阿部くんに、封筒の存在をアピールするように突き出すと渋々受け取ってくれた。

「分かった。嫌な思いさせてごめん」

そう言った阿部くんに腹が立って、思わず強い口調で言い返した。

「だから！そういうのです！何で全部自分のせいみたいにするんですか？俺が阿部くんを選んだんです！」

「選んだ」

阿部くんがふっと鼻で笑った。思わず勢いが止まる。

「選んだって、セックスの相手に？」

「え、」

「セフレに対して随分ロマンティックな言い方するんだね」

「せ、ふれ」

「なに、セフレじゃなかった？あぁ、まあフレンドではない？先輩と後輩だもんね」

馬鹿にしたように笑う阿部くんに、腹が立って、悔しくて、違うと叫びたかったけど、じゃあ何だと言われたらそれに対する答えは見つからない。

次の言葉を探すのに、見つからない。沈黙が流れる。

「もういい？」

沈黙を破ったのは、阿部くんだった。

「これは受け取る。でももう、意味が分かったのならそういう事だから。安心して、仕事には影響させないし、それは目黒もさせないって約束して」

「…分かりました」

「じゃあ目黒、また明日」

阿部くんが去っていく。その背中を見つめることしか出来なかった。