EpisodeXXXVIII ページ38
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「もう結構暗くなってきたか。夜景綺麗だし帰る前にちょっと歩く?」
『うん、』
楽しい時間はあっという間で、外に出るともう辺りはすっかり暗くなっていた。
どうしよう。雲雀くんに余命のこと話そうと思ってたのに、言葉が何も出てこない。セラくんにも応援してもらったのに。雲雀くんにいっぱい勇気もらったのに。なんで…
「Aちゃん」
不意に雲雀くんに名前を呼ばれて顔をあげる。腕を軽く引かれたかと思えば、ちゅ、と唇にキスされた。急に体温が上がって心臓がうるさくなるのが自分でも分かった。
『ひば、りく…』
「びっくりした?」
『そりゃ…!』
私の反応を見て、雲雀くんは嬉しそうにいたずらっぽい顔で笑う。くしゃっと私の頭を撫でて、今度は少し大人の顔をした。
「元気出た?そんな悲しそうな顔せんでよ。また来ればいいやから、な?」
『…なんで、』
「んー?俺は分かっちゃうんよなぁ、Aちゃんが元気ないと」
顔に出したつもりもないのに、雲雀くんは少し笑ってそう言った。また来ればいい。雲雀くんの真っ直ぐな言葉に黙って頷く。胸がきゅうっと苦しくなって、ちょっとだけ泣きそうになった。
『…ごめ、喉乾いたからちょっと飲み物買ってくる』
「え?う、うん」
優しくて、優しくて、私が大好きな人。好きで好きでたまらない人。夢中で走って雲雀くんから離れる。少しだけ息が切れた。やっぱり雲雀くんを悲しませたくない。私は私より、何よりも雲雀くんが大切だ。
私はセラくんに電話をかけた。セラくんはすぐに出てくれる。
【どうしたの?今日って雲雀と出かけてるんじゃ…】
『セラくん。私余命の事が分かってから、その日が来るまで精一杯生きるれば十分って思ってた』
セラくんの言葉を遮ってそう言う。セラくんのおかげで余命と向き合えたから。セラくんには言っておかなきゃいけない気がした。
『でもそれだけじゃきっと雲雀くんは悲しむから、私は余命より長く生きる。だから、私がもうあと半年しか生きられないこと、雲雀くんには言わない』
今日雲雀くんと一緒にいろんなことをして思った。余命より生きてやるって、長く生きるって。だから、雲雀くんには余命のことは言わない。
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ちょこれーと(プロフ) - すと@STo_dreamさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです…(´;ω;‘)更新頑張ります!! (2月19日 11時) (レス) id: 3d98585397 (このIDを非表示/違反報告)
すと@STo_dream(プロフ) - 新作!!待ってました!!もう既に神小説の予感しかしません…。ちょこれーと様ありがとうございます!次の更新が待ち遠しいです(笑) (2月18日 20時) (レス) @page4 id: 47475b39fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこれーと | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/64be1a2e2a1/
作成日時:2024年2月18日 15時