・ ページ30
・
Aが取られなくて俺にとっていいはずなのに、Aが泣いてるのは嫌だった。俺にしとけばいいのに。俺なら泣かせないのに。今からでもAのこと、奪えるかな。
「俺にしなよ」
『…ひば？』
「俺、Aのことすきだよ」
Aを引き寄せて抱きしめる。その手に力を込める。Aの少しくぐもった声が耳元で聞こえた。力を緩めて目を合わせれば、Aの顔は真っ赤で。俺が急にこんなこと言って驚いたのか涙は引っ込んでいた。顔赤い、と俺が呟けば更にじわじわと頬が赤らんでいく。
「…つっても、フラれて傷心中のAちゃんに付け込むとかダサい事したくないし、とりあえずそれ、勿体ねぇし俺らで食べちゃおーぜ」
『…ん、半分あげる』
「ありがと」
俺がただの幼馴染じゃなくて、Aのことを好きな男って伝わっただけでも嬉しいし、Aが照れたのを見られただけでもいい。Aをこれ以上困らせたくなかったから、Aが持っているガトーショコラの紙袋を指さす。
目を合わせることなく、半分渡してくれたのを受け取って一口食べてみる。Aもまだ少し泣きそうなまま一口食べた。
「んん、めっちゃ美味いじゃん。これ1人で作ったの？」
『……うん』
「すごいじゃん、練習した甲斐あったな笑」
やっぱり泣きそうだから、ぽんと頭を撫でる。本当にそのサークルの先輩もこんな美味しいガトーショコラ食べれないなんて損したな。あとこんな可愛くて素直な子逃したのも。まぁ俺がその内奪っちゃうから、取られても困るんだけどさ。
ガトーショコラは2人で完食してしまう。
「…来年は俺がAの本命貰うから」
『…あげないし』
「いーや、絶対貰うもんね〜」
『勝手にすれば』
素っ気ない返事が返って来るけど、やっぱりその顔は少し赤くて。思わず笑みをこぼせば、顔を背けられた。帰ろっか、とベンチを立てば黙ったまま頷いて、大人しく差し出した俺の手を握る。
『チョコあげたから、ホワイトデー返してね』
「Aも食べたじゃん」
『私はいいんだもーん』
「んだよそれー笑、じゃあ来年のバレンタインくれるってこと？」
『前向きに検討しとく』
Aはふふっと笑うと、「ありがとね」と呟く。
やっぱ俺、Aに好かれる自信だけはあるから。来年は絶対本命貰ってやる。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1621人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこれーと(プロフ) - しきさん» コメントありがとうございます！少しずつ解像度あげて書けるように頑張ります！ (3月7日 21時) (
レス) id: 3d98585397 (このIDを非表示/違反報告)
しき(プロフ) - ﾋ-ﾛーまってます！ (2月28日 20時) (レス) @page39 id: 3ca2ff76bf (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 征狐さん» コメントありがとうございます！正直メンタル終了してたことが多々あったので、ゆっくり休みます…。ありがとうございます！！ (2月12日 15時) (レス) id: 3d98585397 (このIDを非表示/違反報告)
征狐(プロフ) - 合格おめでとうございます！今まで大変だったと思います、ゆっくり休んでくださいね…✨ (2月12日 15時) (レス) id: 884f1b32a5 (このIDを非表示/違反報告)
のんはる(プロフ) - ちょこれーとさん» 私なんかの小説を！？ありがとうございます！！これからも更新楽しみにしてます！！ (2月10日 21時) (レス) id: 938b37ffce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちょこれーと
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/64be1a2e2a1/
作成日時：2024年1月2日 15時
