多分い じめられてます【灰谷蘭】

38、初心かよ ページ39

・








『鈍感！蘭くんのバカ！！』








泣きながら俺を睨んで、走って行ってしまったA。
咄嗟に彼女の名前を呼ぼうとしたが、それは声にならなかった。


その代わり、さっきは理解できなかった言葉が頭の中で繰り返される。
俺が分かってくれたらそれでいい？俺が鈍感？










「何だよそれ…」










そんな言い方…
いやいやそんな訳ないだろ。
色んなヤツと話せるようになって、彼氏欲しいとか普通に思っただけだろ…


自分にそう言い聞かせるも、それに納得することはできない。


さっきのAの姿を思い返すと、俺はあることに気付いた。










「っ、あの見た目、もしかして」










ふんわり巻かれた髪。編み込みされている横の髪。
あのピンクを基調にした抑えめのメイク。


前にAに聞かれた「雑誌の中の子で誰が好みか」という質問に、俺が答えた女に寄せられている。
それに今になって気が付いた。
いつもだったら、そんなことすぐに気が付きそうなものなのに。
Aに甘い視線を向けるヤツに苛々しすぎて、全然気が付かなかった。


いやでもスカート短くして釣れる男だと思われてんのは心外だけど。
多分、誰かに吹き込まれたな。










じゃあ…










俺に女の好みを聞いたのも
俺に感想を求めたのも
俺にさっきみたいに怒ったのも全部…


顔に熱が集まるのを嫌でも感じた。
クソ、女に好意を向けられるのなんて慣れたモンなはずなのに。
相手がAだからか、どうしようもなく恥ずかしい。
こんなところで初心かよ、俺。













たまに見せる笑顔が嬉しい。
他の男と話してると苛々する。
一緒にいると、気が楽。



いいヤツだし、可愛いトコあるし、からかいがいのある女ってだけだと思ってた。
でも、それだけであんな風に思うのはおかしいよな。












ああ、何だよ俺












「気付くの遅すぎだろ…」
















・











Aのこと、すげー好きじゃん。
















・

作者→←37、可愛くない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す