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何を思ったのか、気が付けば私は部屋から顔を出していた。いつもふらふらしている彼のことだ、その辺を歩いていたらまた会えるかもしれない。少しこっぱずかしいが、もし本当に会ったら『お手洗い行ってた』とかなんとか言っておけば大丈夫だろう。


 こつ、こつ、こつ。誰もいない廊下は靴音がよく響く。壁に飾ってある絵画ももはや見慣れたものだ。少し歩いたところで、ほんのわずかに開け放されたドアが見えてきた。

 ほかのドアとまったく同じ木調のドア、しかし私には何か特別なもののように見えて。まるで、こちらにおいでと手招きされているような。

 きい。ドアのきしむ音が響く。踏み入れた部屋は、どこまでも深い闇がわだかまっていた。
『電気…』壁を伝って探るも、なかなか見つからない。諦めた私は、闇に目が慣れるのを待った。

だんだん、部屋の内装が浮かび上がってくる。ソファ、テーブル、チェスト、そして

無造作に横たわった



ヒト



『ひっ』
予期していなかった光景に、私は小さく悲鳴をあげた。なんだ、なんでこんなところに人が転がっているんだ。こんな、真っ暗闇に。

そらしたいのに、警戒する対象から目をそらすまいと本能が目線を釘づけにしている。
だんだんと、それはハッキリ見えてきて。
頭の周りに散らばった小さな何か、白いシャツに大きな赤いシミ。
変な方向に曲がった______


「見ちゃだめ」
視界が真っ暗になる。目元が大きなあたたかい何かに覆われた。耳元では聞きなれたテノールがささやかれる。

「それ、君のお父さん」
視界が奪われたまま、テノールは言葉を奏でる。やさしく撫でるような音階で、私の脳みそをぶち壊すような言葉を。

「人身売買でコソコソ私腹を肥やしてた、裏金をたっぷり囲って贅沢三昧。この間ついに俺らのシマの子供にも手を出してね」
ホント、困っちゃうよ〜。シエスタのときに聞いたのと同じトーンで、声は言った。


「人を売ったの、君くらいの年の子たち」
ようやく開放された視界の先で、茶色の瞳は諭すようにこちらを見据えていた。





用事が済んだらお家に帰してあげるからね

君が帰りたければの話だけど





「ねえ、帰りたい?」

向けられたやわらかな笑みに、私は

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作者名:しろもち | 作成日時:2024年2月15日 18時

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