帰りたい?[イタリア] ページ3
更新失礼します、しろもちです。
ある日マフィアの男に誘拐されてしまったあなた。
※「怖い国に捕まってしまった!!」より。
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突然ガタイの良い強面の男たちに誘拐されてはや2週間、私に身の安全の保障を誓った男と優雅にカプチーノなんて飲んでいる。信じられるだろうか、このカプチーノ、今まで飲んできたどんなカプチーノよりもダントツでおいしいのだ。ソーサーの端っこにちょこんとついていたこのビスケットも馬鹿にならないくらいおいしい。
「それでさあ、兄ちゃんてば俺のシャツ間違えて着たのに、お前のシャツなんて着て何の得になんだよって逆ギレしてきたんだよー?自分がまちがえたのにねえ」
『あなたのお兄さんはあなたに逆ギレしてばかりだね…』
「ホント困っちゃうよ〜」
…もう一度言おう、私はガタイの良い強面の男たちに誘拐された。この男はその主犯である。
しかし、いつまでたっても警察は私を見つけ出せないし、ニュースでは「行方不明のAさんは未だ捜索中で…」がテンプレートなまま。しかももうそれなりに日数が経っているものだから、2,3日おきに思い出したように取り上げられるくらいだ。もう私が誘拐されたネタは、賞味期限が近付いているのかもしれない。
「Ciao,俺だよ。うん…へえ、わかった」
シエスタ中の着信音に一瞬眉をひそめながらも、応答。短く受け答えをした後、通話は途切れた。
「ごめんね、ちょっと行かなきゃならないんだ。でもでも、すぐ戻るから!ちょっと待ってて」
テーブルの上で私の手に自身の手を重ね、ラテンのウインクを残して部屋から去っていった。
ひとり、カプチーノはぬるく湯気は姿を消した。思えばこの2週間、暇さえあればあの男が私の傍に来て他愛のないことをしゃべり倒していた気がする。だからこうしてみるとなんだかすごく静かに感じてしまう。
『ビスケットだってまだ残ってるのに』
さびしい、そんなふうに感じている自分が居る。あの男は自分を誘拐した張本人だというのに。
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作者名:しろもち | 作成日時:2024年2月15日 18時