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無間の獄 ci ページ9

老若男女問わず人を嬲り殺した男と同じ空間にいる。その事実だけでも、嫌悪感を抱きそうだった。
格子の向こう側にいる、一際目立つ淡い水色の髪。
それしか特筆すべき特徴がなかった。痩身な男とは聞いていたが、まさかここまで"それだけ"の男だとは感じなかった。

男は床に留め付けた椅子に座っていた。手枷の鎖を足元の鉄環に繋げられて、身動きのできない様にされている。
男は俯いて目を合わせようとしなかった。
その様子を一頻り見つめて、訴状を開く。

「お前は十八件の罪を問われている。これについて何か言うことはあるか?」

そう問いかけても、目の前の男は口を開く様子はなかった。無言のまま、俯いている。僅かに顔が動き、目が合う。
橙にも近いその双眸は、既に死んでいた。本当はこんな色ではなかっただろうに。この男をそうしてしまった原因が、この国にはある。

「なんでも良い。今自分がおかれている立場に対し、言いたい事はないか?」

再度尋ねたがやはり返答はなかった。思わず溜息をついた。ここまで寡黙な男だったとは。面倒だ。
とりあえず全ての件について動機を問い、犯行に至った経緯を改めて聞いたがこれにもほぼ無言だった。

「お前は、その態度を改める気はないのか」

思わず苛立った口調で大きく言えば、男はチラリと此方を見た。口元を歪めて嘲笑うかのように。

「お前が身勝手に殺した犠牲者の中には、まだ幼い子供や赤子もいた。子を身篭った妊婦もいた。それについて、何とも思わないのか?」

やはり男は何も言わず、口元に弧を描いているだけだった。

「酷いことをしたという後悔もないのか」

「別に、ない」

初めて聞いた男の声は予想より若かった。反省の色もなく、ただの無色だった。

「遺族に対しての詫び状もない様だが、罪を償う気すらないのか?」

「ないわ、そんなん。どうやって償えばええの。教えてや。俺が死ねばいいん?死んでも俺が殺した奴等は黄泉の国から帰ってこうへんよ。彼奴ら(遺族)は生き返りでもしない限り、俺を許さんで」

急に饒舌に語り出す男に、言葉が出てこなかった。全くの正論だったからだ。
変な感情を抱きながら、ようやく言葉を紡ぎ出す。

「お前は、自分が取り返しのつかない事をしたと理解しているんだな?」

「そりゃ勿論」

あどけない表情で頷く男に、どっと疲れが押し寄せた。骨の折れる仕事だ、本当に。

→→←善役という名の悪役 zm



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できるニート(プロフ) - 真由さん» ホントですか!そのコメントだけでも励みになります!更新頑張ります (2020年12月25日 12時) (レス) id: ffbcb8a332 (このIDを非表示/違反報告)
真由(プロフ) - 初コメ失礼します...!最新話が鬼っほど大好きです...解釈一致が凄いです...ありがとうございます...!!! (2020年12月25日 11時) (レス) id: 045f50c8f8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:できるニート | 作成日時:2019年9月1日 14時

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