一方的 htrn ページ28
私の仕事場の先輩はとてもかっこいい。その上優しくて、仕事も出来て、完璧だ。
マスク下の表情を初めて見た時は、心を奪われた。
いつしか私は彼に、恋をしていた。
「Aさん、今日も残業?」
大量の書類から顔を覗かせて尋ねてきたひとらん先輩に、私はタイピングしながら「はい」と応えた。
「色々誤差がありまして。一からやり直しなんですよ。プラス大量の書類たち。残業確定です」
「そーなんだ。俺も残業だよ…。今夜はそう簡単には帰れそうにはないね」
そう肩をすくめて笑ったひとらん先輩の指には、キラリと光る指輪がはまっている。
……結婚、してるんだよなぁ
タッチタイピングは出来るので、時たまひとらん先輩の様子を伺う。
スラリとした細い指が、キーボードを打っていく。
時計の秒針の音とキーボードの音、そしてクリックの音だけが残る。
暫くして、叩きつけるような音が外から聞こえてきた。
窓を見てみれば、雨が降っていて。雫が窓をつたっていた。
「…あ。雨」
「___雨降ってきたね。傘、持ってきてないや」
私と同じように窓を見ていたひとらん先輩がそう呟いた。
「Aさんは?持ってきた?」
「…あぁ、はい。常に持ち歩いてるので」
「凄いね…。俺も見習お」
ふんわりと笑ったひとらん先輩に、傘を渡したい気持ちが膨れ上がった。
貴方の為に持ってきてるんです、なんて言えるわけない。
ひとらん先輩には、奥さんがいるから。
泣きそうになった私は、目頭を押さえて背もたれに凭れかかった。
奪う事なんて考えない。別れてほしいなんて考えない。
今一緒の空間にいるだけ、幸せなのだから。
時計の針が11時半を指したところで、ひとらん先輩が立ち上がる。
「俺、終わったから。先上がるね。Aさんも頑張って」
「はい、お疲れ様です。ひとらん先輩」
今日も私の一方的な想いが通り過ぎる。
______
大好きな時間 htrn
これとリンクしてます
悲しい話ばかりですねぇ
636人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未来(プロフ) - 初めましてぴくんとグルなんちゃらに性癖ぶち抜かれました (2019年5月22日 23時) (レス) id: a2cb6e73c5 (このIDを非表示/違反報告)
うえちゃん(プロフ) - クズ先生好きなんじゃあ.....(^q^) (2019年5月9日 20時) (レス) id: 19511bfef8 (このIDを非表示/違反報告)
つらら@ちゃげっ娘。(プロフ) - すっごい面白いです!どの話も凝ってて読んでて楽しかったです!リクエストしていいですか?今までにないくらいのクズっぷり発揮してる大先生が見たいです!地雷に触れるなら嫉妬しょっぴくん可愛かったんで嫉妬大丈夫お願いします! (2019年5月9日 3時) (レス) id: 9e136fef77 (このIDを非表示/違反報告)
レノ(プロフ) - エミさんの話めちゃくちゃ良かったです!その文才分けて欲しいですwまたまたリクエストになるんですが嫉妬ショッピ君とキス魔ロボロをお願いしたいです! (2019年5月6日 23時) (レス) id: cf5e9d323f (このIDを非表示/違反報告)
レノ(プロフ) - リクエストに答えていたたぎありがとうございます!連続リクエストになりますが夢主を慰めるエミさんをお願いいたします! (2019年5月5日 23時) (レス) id: cf5e9d323f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:できるニート | 作成日時:2019年5月3日 21時