あなたと君と (ページ6)

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「俺といもうと」× 黄ページ6

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とんでもないことが起きてしまった。

いつかは、もしかしたらと思ってた仮説が現実化してしまった。

Aの描いた絵が、芸術の都ヨーロッパでの歴史あるコンペで満場一致の最優秀賞を獲得したのだ。

俺自身は、Aの兄として、その名誉ある賞を誇らしく思うし、それを受賞できたことを心の底から称賛している。

俺だけじゃない。むしろAを除くすべてのひとが今回のことに大喜びしているはずだ。

「....賞なんか、いらない。いらないっ」

「わかったから、落ち着きなさい。ちょっとびっくりしたな、みんなが褒めてくれるのに頭が追いついてないんやろ」

Aは知的障害を伴わない、いわゆる発達障害とサヴァン症候群をもちあわせている。

わたしは、単なる絵を描くことしかできない社会不適合者。

障害が見つかるまで長く苦しんだ経験のあるAだから、17歳になった今でもその呪縛から抜け出せていないのだ。

「......こわいっ、.....どうしてすごいって、言うのっ」

「みんな、おめでとう！って言うてくれてんの。誕生日といっしょ。今日は、あの賞を取ったAが生まれた日なんやわ」

「.....じゃあ、おめでとうでいいやんかっ、....すごいって言わないでっ、すごくないから」

「わかった。じゃあ、おめでとうって言うてもらおう。兄ちゃんもそうする。おめでとう、A」

涙でぐずぐずの顔。

これが悲観的な涙やとは、世界中誰も思ってないことやろう。

俺だけがわかってれば、この子はだいぶ安定する。

でも、今回はそうじゃなかったみたいで脳みそをかき混ぜる勢いでぶんぶんと首を横に振り始めた。

「そうやない、そうやないの」

言葉を覚えるのも、コミュニケーションをとるのも苦手だから、自身のもやもやを言葉にするのがすごく苦手。

「どこがやろ？おめでとうが違う？兄ちゃんが違う？」

「.....にぃちゃん、」

「そっか。兄ちゃんは、おめでとう言うたらあかんのね」

「.....ん、....あかんの」

「にぃちゃんは、すごいって言って？」

その言葉でAが絵を描く起源を思い出した。 15年前のこと。

俺が、高熱を出して寝込んだことがあった。

そのお見舞いに描いてくれたその絵は当時２歳の子が書いたものには、俺も幼心に全く思えなくて。

すごく、褒めたのが始まりだった。

そうか、この子は今もまだ俺に褒められたい一心で、絵を描き続けてるんやった。

(俺といもうと × 黄)