あなたと君と (ページ12)

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「俺といもうと」× 紫ページ12

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「兄ちゃん、ちゃんと言うてくれた？」

結婚を考えている恋人がいる。

こっそり話した日から、Aはほぼ毎日のように俺にそう尋ねてくるようになった。

「妹が、右足半分しかないこと。言うてくれた？」と。

「大丈夫やって、紹介するときにAにも会わすやんか」

「ちがうよ、それじゃ遅いんやって」

「遅ないって、何を心配してんの？」

「兄ちゃんと恋人さんのことやんか。生まれつきなんやで？わたしのこと」

「遺伝するかもしらんことわかってる？」

気づけば３ヶ月くらい経っていたかもしれない。

それでもしつこく「言うてくれた？」と言うのは、まだ見ぬ俺らの子供のことを思ってくれてたみたい。

「そんなこと誰も心配せんって」

俺はAに心配をかけたくない一心やった、俺ら二人のことやからって。

まだ、高校生のA。

けれども、結婚をした経験があるかのように俺にこう諭した。

「二人だけのことじゃないよ、二つの家族のことやで？」

「二つの、家族」

「そう、だからわたしだけでもいいから先会わせて？もう結婚の話を恋人さんにも匂わせてからでいいから」

「ちょ、ちょっと考えさせて。話はそっからにしよ、な？」

「もしもの話なんやけど、」俺はその次の週に、恋人に話した。

例えばの話として。例えば、家族の中に病気になってるひとがいて、それが生まれる子供に遺伝するかもしらんってなったらと。

冷や汗をかいてた、そしたら恋人はすぐにそんな俺を見抜いた。

「それ、たかの家族のこと？」って。

こんなにも頷くだけで震えたことは今まで一度もなかった。

「妹が生まれつき右足が短くて、義足を使ってんのよ。俺は全然心配するようなことじゃないっていうてるんやけど、本人がさ。めちゃくちゃ気にかけてて、.....ん、なんか、うまく言えんけど」

「俺は、結婚を考えてるねん、」こんなはずじゃなかったのに。

でも、前置きがそうじゃないと話がおかしくなりそうでついつい口滑ってしまった。

恋人は驚きながらもわらっている。

「急に大事なこと詰め込み過ぎ」驚くほどに冷静だった。

「妹ちゃんに会いたい、」

「え、会いたい？」

「いずれ私の妹にもなるんでしょ？仲良くなっときたいやん」

その言葉をAにそのまま伝えた。

そしたら、自分でも「会わせて」って言うてたくせに途端に緊張し始めて、そんな姿がまた可愛らしかった。

(俺といもうと × 紫)