「わたしと弟」× 赤 ページ1
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「お姉ちゃーんっ!」
卒業してから、早くも5年が経つ地元の小学校。
10歳年下の弟が入学したのは、今年の春だった。
最後まで両親が悩んだ結果、とりあえず支援学校ではなく支援を受けながら普通級で様子を見てみることを選んだ。
「おかえりぃーっ!」
「ただいま、大毅。 汗だくやんか、保健室の中で待ってたらええのに」
にこぉっと奥歯まで見せてわらう顔には、生まれてすぐからの付き合いである酸素カニューレ。
弟には、超未熟児で生まれたことの名残で重い呼吸障害がある。
身体も人一倍小さくて、入学式で見たときは頭ひとつ分くらい周りとは差があるように見えた。
それでもその身体でいっぱいの元気と明るさを表現し、
周囲までもを同じく元気に明るくさせる力は、どんな大きな身体を持ち合わせていても敵わないほどだとわたしは思う。
「だいき、今日苦しくなっちゃってん!」
そんなことも転んじゃった程度のテンションで言うから、たまにリアクションのとりかたに悩まされることもあるんだけれど。
「そうなん? どう苦しくなっちゃった?」
「すーはーがうまくできへんくなっちゃって、だいきびっくりして泣いちゃった」
「そっか、泣いちゃったか。 そりゃ余計に苦しかったね? でも、その感じやと自分でちゃんと苦しいの先生に言えたんやね」
「ん、一年生やもんっ! 保健室で、マスクでな? ねんねさせてもらった。 あ、ねんねじゃない! えっと、寝かせてもらった!」
「今のはまちがい!」それだけ強がれているのなら安心だ。
「お母さんにないしょしてくれる? ゆびきりっ!」
相変わらず手先は冷たいけれど、手先以外の全身には燃えたエネルギーがいっぱい溜まっているみたい。
「お姉ちゃん、だいきのごろごろ持って?」
「ええよ。 学校でもそうやって酸素のごろごろ持ってって言えてる? 階段のときとか」
「ん、にじいろ学級のせんせ!」
「そっか、ほな大丈夫やね? すごいやん大毅、上手に身体と仲良しできてるんや」
「んっ!」と頷く手を、繋いでのんびり歩いて帰る。
うちまでは、わたしがひとりで歩けば10分もかからない。
けれど弟を隣にかまえると、20分くらいはいつも見込んでおきたくなる。
弟の目標は、家までわたしと手を繋いでいること。
おんぶをすると手を繋げなくなるから、苦しくならないように途中で深呼吸をしたり頑張ってる姿がこれまた愛おしい。
(わたしと弟 × 赤)
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望 穂(プロフ) - 最近また更新頻度高く茉都香さんのお話読めるの幸せすぎます。書き手続けてくださって本当にありがとうございます‥! (2023年3月22日 20時) (レス) id: b8ce30f811 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2023年3月21日 11時