俺に関わってくれた人へ。 (ページ16)

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side Akito

"オトン、帽子、買ってきて"

大毅からそんなメールが届いたのは、３日後の午前中のこと。

橙「…きたかぁ」

職業柄、会社の中にはそういったガンの方が被る帽子なんかにも携わっとる人がおんねん。

紹介してもらって、その時は親切でサンプル品をもらってん。

もう１つ、ニット帽を購入して、お昼休みに病院に向かった。

橙「だいきーっ」

赤「あ、オトン。」

橙「きちゃったか～？」

赤「へへっ、きちゃったわー。」

もっと落ち込んどるかと思ってんけど、案外明るかったな。

ほらほら！なんて言いながら抜けた髪の毛見せてくんねんもん。(笑)

赤「これでトモにあったらさ、バレてまうよな。」

橙「もう、理解出来る年齢やと思うで。トモは。」

トモがこの前宣言した夢は、恥ずかしいから言わんといて。とのことやったから、大毅には言うてなくて。

ただ、思ったより大人になってんねん。とだけ伝えた。

赤「そっか。うわっ、病人や。」

橙「そらそうやろ。病人やねんから。」

赤「ありゃ、そうか(笑)」

帽子をかぶった大毅を見て、笑いあった。

１番しんどいはずの大毅が、１番病気を受け入れて、誰よりも前向きやった。

これは、ずーっと変わらんかった。

橙「今日は、副作用辛くないん？」

赤「うーん、口内炎とか、ダルいとかはあんねんけどさ、おえーっみたいのはないわ。」

橙「そっか、そしたら、元気なうちに、リフレッシュとかしたらええんちゃう？ちょっと歩いたり。」

赤「流星が戻ってくればなー。」

そういえば、流星がおらん。

話を聞くと、ちょっと前に検査に行ってしまったらしい。

赤「あ、でもな、新しい友達出来てん。」

橙「え、そうなん？」

あっち。と大毅が指さした先には、まだ５歳くらいやろうか、高い柵がついたベッドに座って絵を描いている男の子がおった。