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side.O
今日の打ち合わせは下見も兼ねて実際に個展を開く会場で行う事になっている。
少し離れてた所にあるが電車を乗り継いで一時間程の距離だ。
「もう出るの？」
「今日は雨も降ってるし早目に出る事にするよ。翔くんは今日休みでしょ？終わったら一緒にマスターの所行こうか」
「分かった。気を付けて行ってきて」
玄関先まで見送ってくれる翔くんは本当に出来た嫁みたいだ。
外は雨も降っているし、慣れないスーツを着ているせいか資料を入れている鞄が駅に着くまでに濡れてしまった。
「やっちった」
タオルでささっと水気を払うも既に水を吸収し冷たくなっていた。
冷たい鞄を抱えて電車に揺られて一時間。会場に着くと入口の所に見覚えのある人を見つけた。
「お久しぶりです。大野さん」
「ご無沙汰してます、中島さん。相変わらず早いですね」
ブラウン系のスーツを身にまとっている彼は俺に個展を開く話を持ち掛けてくれた中島さん。
企画提案会社に務めており年齢も俺と近いから話しやすいし、何より俺の作品を認めてくれている。
「鍵はもう貰ってありますので、どうぞ中に」
正面の自動ドアのロックを解除して、静かな施設内に入る。５階建てで今回は全てのフロアを会場として使用する事が出来るらしい。
「こんな広い所で…ホントに凄いわ」
「大野さんの作品は超大作ですからね。ここがピッタリですよ」
「褒め過ぎですって」
「いえいえ。そんな事はありません。あ、今日少し遅くなるかもしれないんですけど大丈夫そうですか？」
窓の外の雨を見て申し訳なさそうに俺を見る。
確かにこの雨じゃ電車、止まるかもな。かといっても、他の日にずらす訳にもいかないしな。
「構いませんよ。中島さんもお忙しいでしょうし」
「すいません。もし何なら、タクシー出しますから」
中島さんの言葉に甘えて、軽い昼食を取りながら打ち合わせを始める。
「時間帯はこの様な予定で大丈夫でしょうか？」
「うん、そこは任せるよ」
「それから、宣伝方法なんですがテレビや雑誌の取材など受けて頂く事は可能ですか？」
取材ねぇ。柄じゃないし、そういうの苦手なんだけどなぁ。
「代わりに中島さんが受けてよ」
「いやいや、僕が受けてどうするんですか。大野さんに受けてもらわないと。もし、嫌なら他の方法も考えますけど」
「いや、やっぱり受けるよ」
難しい顔をして頭を悩ませる中島さんを見たら心苦しくなって引き受ける事にした。
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作者名：未翔
| 作成日時：2020年3月8日 20時
