ONLY LOVE ５【ARS】 (ページ37)

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past.90 ページ37

side.M

ずっとずっと俺の憧れで叶わない恋もした。

それでもあの人の傍に居れたのは俺を拒絶しないでくれたから。

俺が大人になる時間を与えてくれたから。

「翔さん…なんでだよ」

お袋に代わって夕食を作り家族で食卓に着く。何でもない話をして自室に帰って一眠りした後のことだった、相葉くんからの連絡があったのは。

軽快な音楽が鳴り響きベットから這い出た俺は携帯を掴むと表示されている名前に電話を取るのを躊躇った。

時間と相手からして緊急の用事だろう。
そして何故か胸騒ぎがした。

『もしもし』

(……まつじゅ)

恐る恐る電話を取っても何の反応もないと思いきや、彼らしくない小さな震えた声が聞こえた。

『相葉くん、どした？』

本来、先輩である彼にこんな口調もどうかと思ったが、今の彼にとってはいつも通りが大切だと思った。変に敬語を使って距離を取るのは違う。

(しょちゃ…翔ちゃんが)

『翔さんに何かあったのかよ！』

冷静さをを保たなければいけないのに、あの人の名前を聞くとつい熱くなってしまう。

未だにあの人に少しは特別な感情が残っている事に驚きながら俺らしいとも思えた。

(翔ちゃんがね、倒れたって。病院に運ばれた)

『えっ？翔さんが？』

俺とは正反対に徐々に落ち着きを見せ始める相葉くんは何度も「大丈夫だから」と言った。

きっと彼も病院に向かっているのだろう。
街の音を感じた俺は彼の強さに包み込まれている事に気付いた。

(松潤も今から来れる？一緒に翔ちゃんに会いに行こう。翔ちゃん、松潤が来るの待ってると思うよ)

『しょう、さん…翔さん！』

(近くの大学病院だから。皆んなそこで待ってるから…松潤、大丈夫だからね)

相葉くんは最後まで俺を勇気づけた。

彼も不安で堪らないだろうに、やはり彼には適わないのだ。

大野さんにも相葉くんにも風間くんにも和にも。俺はきっと誰にも適わない。

でも、それでも俺はあの人の傍に居たい。

『潤…お前なら絶対大丈夫だよ。だからもっと自信持て。俺はお前の優しさも何もかも知ってるから』

翔さん…

俺は貴方の何を知っているのだろう。

きっと半分以上知らない事だらけだ。
それでも今からじゃ遅いかな？

貴方の全部を受け止める。その覚悟はとっくの昔に出来ているのに、貴方はどうして一人で背負い込もうとするの。

そんなに抱えたら貴方は潰れてしまう。

だったら俺は貴方の傍でその重荷を少しでも軽くしたいんだ。