ONLY LOVE ５【ARS】 (ページ35)

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side.A

俺はただがむしゃらに走っていた。

どこに向かっているのか頭では分かっているはずなのに何故か思考が停止している、そんな状態だ。

「ハァ…ッ待っててね翔ちゃん」

事の始まりは風間ぽんからの電話だった。

電話を取ると普段より上擦ったような様な風間ぽんの焦りを感じて「どうしたの？」と聞くのが怖くなった。

それでも俺が質問する前に風間ぽんの悲痛な叫びが俺の鼓膜を揺らした。

(翔くんが、しょくんが…)

翔ちゃんの名前を呼びその先が続かない風間ぽんに堪らない不安が押し寄せる。

『ねぇ風間ぽ…』

(翔くんが…病院に運ばれた)

『…ッえ？どういうこと…』

頭の中は完全に混乱していた。

『翔ちゃんが？何言ってんの？冗談も大概にしてよ、風間ぽん』

冗談のはずが無いのに。風間ぽんがこんなにも苦しそうに声を絞り出しているというのに、俺は現実を受け入れる事が出来なかった。

(ホントなんだ。それに俺、相葉ちゃんに隠してる事があって…翔くんとは幼馴染なんだ。それと、それと…)

捲し立てるように言葉を紡いでいた風間ぽんの声が途切れた。

もう馬鹿な俺の頭はとっくに容量を超えていた。ただ風間ぽんの言葉を耳から聞くだけで精一杯だった。

だから脳が咄嗟に聞こえない振りをしたのかもしれない。現実から目を背けるために。

でも、

＿＿それと、それと…翔くんは病気なんだ。

聞きたくない言葉は俺の頭の中にしっかりと残っていた。こんなの何かの間違いだって、そう思うのに溢れた涙は止まらない。

『そんなの絶対ウソだ。俺は信じないから』

(相葉ちゃ…)

『ねぇ翔ちゃん、翔ちゃん。どこに居るの？どこかで俺の事見てるんでしょ？翔ちゃんドッキリなら早くネタばらししてよ。ねぇ翔ちゃん！』

もう誰の事も気にしていなかった。

夜だというにも関わらず大声を上げて翔ちゃんの名前を呼んだ。狂ったかのように呼び続けた。

それから何時間経ったのかは覚えていない。いや、実際には数分程度だったのだろうか。

落ち着いた？という風間ぽんの声が俺を現実の世界に連れ戻した。

(ここから近い大学病院の場所、分かる？そこに居るからさ出来たら会いに来て欲しい。あと、松潤にも伝えてあげて欲しい。俺はニノに連絡するから)

『うん…わかった。会いに行くよ』

(ありがと。相葉ちゃん、大丈夫だからね)

もう意識も記憶も定かではなかったが最後に聞こえた風間ぽんの声は消えてしまいそうな位に優しかった。