ONLY LOVE ５【ARS】 (ページ29)

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side.Kiuchi

どんなに嫌だと願っても必ず朝日は昇って来る。そして、いよいよ俊くんが旅立つ日だ。

新しいご両親が迎えに来てくれるのは昼前の約束だから、朝ご飯は皆んなで食べる最後のご飯。

昨夜は泣いてぐずった翔くんだったが、結局は自分の部屋に帰るしかなくて、嫌でも俊くんの顔を見たはず。

でもこれが最後の時間だとしたら少しでも長く同じ時を過ごして欲しい。そう思うのだ。

朝ご飯の時間にはいつも通り翔くんと俊くんは手を繋いで仲良く部屋に入って来た。

どうやら何とか打ち解け合えたか。それか私の昨夜の台詞が微かな希望を与えてしまったのか。

どちらにせよ今は何も言わずに、ただ二人を見守っていよう。

朝ご飯を食べ終え、皆んなは俊くんにベッタリ。

高校生の智樹くんはサッカーボールを、いつも仲良くしていた小学生の瑞希ちゃんはお気に入りのキーホルダーをプレゼントしていた。

そんな中、翔くんはずっと俊くんを見つめていた。

さっきまでの笑顔も封印して、心が露になったみたいに泣きそうな顔をして俊くんを見ていた。

そして、約束の時が来た。

『翔くん、またね』

俊くんが翔くんの手を握って、仮面を付けたような笑顔で手を振る。

『俊くん…やぁだ。やぁ』

その手を追うように翔くんが手を振り回すから、それを抑え込むように抱き締めた。

そんな翔くんに昨夜と同じように戸惑いを浮かべながら立ち止まってしまった俊くんに向かって大きな声を上げた。

『いいから行きなさい。大丈夫だから』
『翔くん！』

私が声を上げたのと同時に翔くんの名前を呼んだ俊くんはご両親の元に向かって歩き出した。

一度も振り返らずに翔くんを見ないようにする為に。

きっともう一度、翔くんの顔を見てしまえば決意が揺らいでしまうのだ。

悲しい、寂しい。その感情に負けてしまう。

だから、必死に後ろを見ないでただ前だけを見て、新たな幸せの元に向かって行った。

俊くんとの別れ。

それは、またしても翔くんの心を傷付けてしまった。どうしようもない事のはずなのに、苦しくて堪らなかった。

あんなに仲の良かった、いやそんな言葉じゃ語れない。魂で繋がったあの子達を引き裂く運命など哀しくて。涙を流す翔くんを抱き締める事しか出来なかった。

『真央せんせ』

『ん？』

『僕と俊くんの部屋をずっとこのままにして？』

少し落ち着きを取り戻した翔くんは私の腕を掴んで初めての願いを告げた。