ONLY LOVE ５【ARS】 (ページ28)

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side.Kiuchi

あの時の喜びは今でも覚えている。それくらい翔くんにとっても俊くんにとっても私にとっても大きな出来事だった。

でもその直後に翔くんの心の支えでもあった俊くんがひまわり園を旅立つ事が決まった。

この子達を養子に、と言ってくれる優しい人がこの国には少なからず居る。そして何度か対面し、子供も引き取る夫婦も了承した上で決定される。

俊くんも翔くんが来る少し前から養子縁組の話が出ていた。俊くん本人も凄くその夫婦に対して甘えられているようで安心していた。

何度かご自宅に泊まりに行ったり食事をしたりと一緒に居る時間を刻みながら、確実に愛が生まれている事を私は間近で感じていた。

そして、俊くんが居なくなる前日に他の子供達に話した。俊くんは俯いて寂しそうな顔をしたけど、だからこそ私は前日にした。

『俊くんが…、おめでとう！』
『優しい人なんだよね？おめでとう！』

『そうだよ。もちろん優しい人。ね？俊くん』

寂しい時間を余り長引かせたくない。明日になれば新しい家族が迎えに来てくれるのだから。

私の問いに頷いた俊くんは皆んなに笑顔を向けると心配そうに翔くんに視線を向ける。

それは私も同じだった。翔くんにとっては初めての出来事で、それが今まで一番近くに居た人だとすればどうなるのだろう？

『、翔くん…？』

俊くんの呼び掛けに不安そうに顔を上げた翔くんはホロリと涙を流した。

『しゅんく、嫌だ…ずっと一緒って…』

翔くんにはまだ早すぎた。
全ての事が早すぎたんだ。

『ごめ、ごめん…翔くん』

『いっしょ、て…』

翔くんは泣きじゃくって俊くんに取り繕う。

そんな翔くんを唖然とした様子で見つめながら、謝罪の言葉ばかりを口にする。

堪らず翔くんを引き剥がしてその背中をそのまま抱き締める。抱きしめても尚、俊くんに手を伸ばすから金森先生に合図して俊くんを連れ出して貰った。

『なんで…いっしょ、って言ったのに』

きっと初めて会った翔くんに大丈夫と伝えたかった、安心して欲しかったのだろう。

"ずっと一緒だよ。僕が居る"

それが俊くんが翔くんに伝えた安心と安らぎ。

『翔くんには、真央せんせが居るでしょ？だーから、大丈夫！ね？』

『でも、しゅんく』

『また会えるから。だいじょーぶ』

落ち着きそうにない翔くんに無理やり現実を突き付けるのは酷な気がして、咄嗟に嘘をついてしまった。

また会える、そんな保証は何処にもないのに。