136 歩いてきた道。 ページ21
side.N
ちょっとした騒動があってしばらく。今日は12月30日。今年もいよいよ終わりだ。
「ねぇ皆んな明日空いてんの？」
「うーん俺は夕方までだから終わり次第すぐ帰ってくるわ」
「俺はバイトもないから、いつも通り料理の準備しとく」
ここに5人で暮らすようになって毎年、大晦日は潤くんの手料理を囲んで某歌番組を見て年を越している。
明日は相葉さんの練習も夕方までらしく、帰って直ぐに麻婆豆腐を作ると今から張り切っている。
「また麻婆？てか大晦日に？」
「だったらニノは俺の麻婆食べるの禁止ね」
「俺の麻婆って…」
潤くんにも軽く笑われて、お怒り気味の相葉さんが翔ちゃんと大野さんの所に逃げて行く。
ソファーで寛いでいたであろう大野さんの声が聞こえて俺も潤くんも笑いを堪えるのに必死だ。
その潤くんはといえば三賀日に食べるお節の下準備の為にキッチンに籠っている。
お重を覗けば半分程が完成しており、色鮮やかな料理が並んでいる。
潤くんのお節はよくある縁起の良い食べ物もちゃんと入っており尚且つ俺達の好物もちゃんと別に作ってくれている。
「相変わらず凝ってますね」
「そうじゃねぇーよ。ただ不器用なだけだって。和が作ったら俺よりもっと早く出来んだろ？」
「どーだか、でも器用な方なんで出来ちゃうかもしれませんね」
「お前…ほんと地味にムカつくわ」
「なぁ和」
「ん？」
軽い冗談に包丁を持った手を止めることは無かった潤くんが俺の名前を呼んでふっと真顔になる。
「ちょっとは前に進んでるんだよな？俺たち」
不安そうな声と表情はまさにあの時そのものだけど、俺は進んでると思う。
「進んでるよ、俺たちはもう友達なんかじゃない。家族だよ。家族っていう言い方が正しいのかも分かんないけど、俺たちはそれくらい強い絆で結ばれてる」
「だよな…俺もそう思う」
大きく頷いて再び手を動かし出した潤くんはあの頃より強くなった。そして、俺も。
皆んな強くなったんだよ。
あの頃は皆んなボロボロだった。心も身体も。
何の為に生きていくのって悩んでた翔ちゃんに俺たちは希望の光をさせたのだろうか？
自分を責め続けた大野さんに安らぎを与える事が出来たのだろうか？
____無償の愛
それは脆くて儚くて壊れやすい物なのかもしれない。家族だから無償の愛が通用するというものでもない。
ただその人を愛するという事だけが無償の愛なのだろう。
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作者名：未翔
| 作成日時：2020年3月8日 20時
