135 変わらずの朝。 ページ20
side.S
目が覚めると俺の部屋にニノは居なかった。
よかった、ちゃんと自分の部屋に戻って寝たんだ。
どうやって着たかもあやふやなパジャマを脱いで、クローゼットから適当に服を引っ張り出す。そして一番近くにあった服を手に取って着替える。
リビングに降りようと扉に手を掛けようとして、その手が止まった。
「智くん、大丈夫かな…」
いつまでもこんな所でウジウジしていても何か変わる訳でもないのに、部屋を出る勇気が湧かない。
智くんを壊してしまったんじゃないかって怖くなって昨日はニノに泣き縋ってしまった。ニノはその事に触れないようにしながら、とにかく眠って欲しいと薬を飲ませてくれた。
きっと智くんの一瞬の綻びを見逃してやって欲しいというニノなりの優しさだろう。もしくは俺が壊れたせいか。
どちらにせよ、あの三人に心配を掛けた事は間違いない。ちゃんと話さなきゃ。
意を決して扉を開けるとリビングで楽しそうに話をしている四人が見えた。
「あ、翔ちゃんおはよー」
「おはよう。翔さん、大丈夫そう？」
「翔ちゃん翔ちゃん。肉じゃがだよ？松潤がちゃんと取っててくれたんだ。早く食べないと俺が食べちゃうけど？」
何と言うか、いつもの空気。
普段と変わらぬニノの挨拶に、エプロン姿の潤、挨拶早々に喋り続ける雅紀。
ただ一人、智くんは俺の顔を見るなり悲しそうな顔をして俺に向かって走って来た。
そんな悲しそうな顔をさせたのは俺なんだから。そう思ったら嘘臭い演技のような挨拶が零れた。
「おはよう、智くん。昨日はごめんね。俺、また酷いことして、傷付けちゃったよね？」
俺の言葉にブンブン首を振って、そんなに振ったら首痛めちゃうよ。
「違うんだ、翔くん。ごめん。謝るのは俺の方なんだ。冷静で居ようってそう思ってたのに昨日は気が動転しちゃってさ。ほんと、ごめん」
「いやいや、それは俺が」
「いや翔くんは悪くねぇ。俺が悪いから」
「智くんは悪くないって」
「もぉー長いって。おじさんも翔ちゃんも許してあげなさいよ。お互い様って事で」
誰が聞いても飽きそうな攻防を繰り返している俺達に待ったを掛けてくれたのはニノ。
「そーだよ、朝っぱらから頭下げすぎ」
「翔ちゃーん、早くしないとホントに食べちゃうよ？」
「もう。相葉さんは肉じゃがの心配しかしてないんだから」
そんな三人の言葉に俺と智くんは顔を見合わせて微笑む。こいつらと一緒に過ごせて俺は今、最高に幸せなんだ。
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作者名：未翔
| 作成日時：2020年3月8日 20時
