ONLY LOVE ５【ARS】 (ページ14)

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side.Kiuchi

「翔くんに初めて会ったのは翔くんが5歳の時だった…」

ちらりと横目で大野くんを確認すると話の続きを促す様に頷く。

私は物心ついた時には両親ともに傍には居らず、ひまわり園で育った。その後、誰にも引き取られる事もなく高校生活を終えた。

そして進学や就職活動の道には進まずに園を存続させるという意志を引き継いでひまわり園で働く事になった。

私がひまわり園で働くという形で生活しだして暫くだった、俊くんがうちの園に来たのは。

僅か二歳で両親を失くし分けも分からぬまま園に来た俊くんに笑顔になって欲しくて必死に話し掛け続けた。

すると最初は会話をする事すら難しかったのに、他の子供たちと変わらないぐらい子供らしくなってくれた。

『まおー今日のお昼なーに？』

『こら俊くん。真央せんせ、でしょ？』

『へへっ、で？なになに？』

『もう…今日は皆んな大好きオムライスだよぉ』

うちの園に居る子供たちは16人。生まれたばかりの赤ん坊から高校生まで。様々な年齢の子供たちが暮らしている。

その中で皆んなそれぞれに"事情"というモノを抱えている。私は全員の"事情"を把握しているが、中には本人に知らせたくないような事実もあった。

どんな事情があるにせよ子供たちと笑って過ごす事が私にとって何よりの幸せだった。

そして、その日はやけに子供たちが楽しそうに過ごしていた。

『まおせんせ、これどう？』

『お、陽くん上手だねぇ。先生ビックリだよ』

お絵描きやら本読みだの、各々の遊びを見守りながらお昼ご飯は何にしようかと考えていた時だった。

『真央先生、ちょっといいですか？』

『はい、どうかした…ってその子…』

同僚の金森さんに呼ばれて子供たちが遊んでいる部屋を出ると、金森さんの腕には小さな男の子が抱かれていた。

『さっき園の前を掃除してたらこの子が倒れていて、一緒に置かれていた鞄の中にこれが』

手紙らしきそれを受け取り、必死に活字を目で追いかけた。

手紙にはこの子は五歳の男の子で名前は翔という事、幼い頃から体が弱い事。その他にも誕生日など翔くんに関することがびっしりと書かれていた。

そして、金銭面の理由で手放すしか方法がなかったとも。

その中でも一際気になったのが最後の文だった。

___私たちじゃ幸せに出来ません。私たちの勝手を許して下さい。

『この子には…翔くんには何の罪もないのに』

眠っているのか、翔くんは金森さんの腕の中で微笑んでいた。