past.76 ページ13
side.O
加藤先生と話した後、翔くんの様子を見に行ってはどうかと言われその足で病室に向かう。
薄暗い廊下を歩きながら、不安に思うのは翔くんの気持ち。
翔くんを支える、今はそんな強気な気持ちでいるけど実際翔くんに会ったら俺はきっと泣いてしまう。
「情けねぇ…泣きたいのは翔くんだよなぁ」
パシッと両手で頬を叩く。そして、そのまま頬を上に押し上げて笑顔を作る。
少しペースを上げて角を曲がれば、椅子に腰掛けている二つの人影が目に留まる。
そのうちの一つは俺が知っている人だと気付くのにそう時間は掛からなかった。
「風間くん…」
「大野先輩、」
俺の足音に気付き、サッと立ち上がった彼は少し泣きそうな顔をして俺を見つめる。
けれど、俺には分からない。
どうして彼が泣きそうな顔をしているのか。
どうして彼がここに居るのか。
彼の隣に居る人は誰なのか。
「すいません！ずっと大野先輩に隠していた事があるんです。俺と翔くんはもう10年以上前に出会っていました」
「…え？」
頭を下げ続ける風間くんの言葉は一切入ってこなかった。
茫然とする俺に何と言葉を掛けていいか分からないと困惑する風間くんを見兼ねたもうひとが立ち上がる。
「初めまして、大野くん。私は木内真央です。ひまわり園という養護施設で翔くんと俊くんをずっと見てきました。そして、今も」
「すいません、真央先生。俺、何て言っていいか分からなくて…」
「大丈夫だから。私は大野くんに翔くんの事を話すから、他の子達に連絡してあげて」
俺の目の前で繰り広げられている会話についていけなくて、まだ俺の知らない翔くんが居るという事だけを理解した。
風間くんが走って俺が来た道を戻って行く。
「あの、」
「真央先生って呼んでくれたらいいから」
「へ？」
一瞬で戸惑いに落ちる俺の事などまるで気にしないかのように彼女は話を続ける。
「ほーら」
「ま…真央先生」
「うん、それでよし。翔くんの事話すと長くなるしきっと既に混乱してるでしょ？取り敢えずここに座って」
俺が座ると、すぐ横に座ってゆっくりと背中を摩ってくれる。その優しさがいつも俺の隣に居る翔くんの優しさと重なって、不思議と気持ちが落ち着いた。
「もう大丈夫です。教えて下さい、翔くんの事」
「ホントに覚悟は出来てる？」
力強い視線に大きく頷く。
「分かった。さぁ、どこから話そうかな」
真央先生は昔話をするかのように穏やかに話し始めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 399人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2020年3月8日 20時
