ONLY LOVE ５【ARS】 (ページ12)

今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:84,567 hit

past.75 ページ12

side.Kazama

激しい風が吹きつけ一部の地域が停電している事を知ったのはついさっきだった。

俺が住む地域の直ぐ隣で歩いて行けば五分も掛からない所だ。そして翔くんと大野先輩が暮らしているのはちょうどその辺りだ。

メールを送ろうと携帯を取ればバイブすると同時に音楽が流れる。久し振りに見る相手の名前に驚きながらも慌ててその電話に出た。

「もしもし。お久しぶりです真央先生。こんな時間にどうかしました？」

(俊くん、今から出れる？翔くんが倒れたって先生から連絡があって、ってちょっと俊くん？)

「大丈夫です！すぐ行きますから。いつもの病院ですよね？」

(そうだけど、雨も降ってるし気を付けてよ)

電話を切り携帯と財布を持って家を飛び出し、駅前でタクシーを捕まえて病院に向かう。

真央先生のあの様子だと恐らく症状が大きく出たのだろう。

以前、翔くんが検診をサボって真央先生に連絡がいった時は怒りながらも幾分穏やかな空気が流れていた。

それに反して今日は随分焦っていた様に思える。そしてその焦りが俺の心をも焦らす。

病院の夜間入口から入り勝手知ったる通路を抜けて、事前に知らされていた病室に向かう。

蛍光灯の小さな灯りが揺れる廊下を進んでいると、病室のすぐ近くの椅子に腰掛けている真央先生を見つけた。

「真央先生」

「俊くん…ごめんね、遅くに呼び出して」

「いえ。俺は全然。それより翔くんは？」

一瞬躊躇いを見せて直ぐにぎこちない笑みを浮かべる真央先生を見て悟った。

「やっぱりあの時の…」

「先生曰くそうだろうって、でも身体の方はもう大丈夫。心配要らないって」

僅か五歳の時に出来てしまったトラウマ。それに今尚苦しみ続ける翔くんを救ってあげる方法はあるのだろうか。

「それと、大野さんが来てるみたいで」

「俺は大野先輩なら信用出来ますし、翔くんを支えてくれると思います」

「そう。なら翔くんにも納得してもらわなきゃね、昔話をする事」

俺の言葉なら大丈夫だと言う真央先生の信頼を受けて、俺は大野先輩とアイツらに翔くんの全てを話す事を決めた。

大野先輩は、相葉ちゃんはどう思うだろうか？ニノは、松潤は受け入れるだろうか？

____翔くんの過去を知っても傍を離れないって、そう誓える？

なんて言葉を言えたらどれほど楽なのだろう。

知っていたくせに、一番を気持ちを理解出来たはずなのに今日まで何も出来なかった俺に神様はどんな罰を与えるのだろう。