128 優しい眼差し。 ページ1
side.M
大野さんと翔さんが出掛けてからというもの、何となく落ち着かなくて。誤魔化そうとキッチンに居たらまぁ逆効果。
雅紀と和にも気を遣われてるのは辛うじて気付いていたから適当にメモを書いて雅紀にそのメモを渡して急いで自室に戻った。
ベッドに寝転がって無機質な天井を見上げ、溜息をつく。
自分でも分かっている。こんなにも落ち着かないのは大野さんと翔さんが出掛けているからだ。
それもあの人に会いに。
翔さんが望んだ事だし、それは叶えてあげたいと思う。けど、
「やっぱ落ち着かねぇ」
暫くして、ガチャっと扉が閉まる音がして、それと同時に雅紀と和の楽しそうな声が聞こえる。
きっと俺が無理やり押し付けた買い物から帰って来たところだろう。
「潤くん、ちょっといい？」
ノックとともに和がひょっこりと顔を出す。
「あ、」
「何ですか、その顔は。じゃあ、お邪魔しますよ」
さっきまでの自分の態度を思い出して接し方を見失っていると、そんな事もお見通しの和は笑って扉を閉めると俺のベッドに座る。
「機嫌悪いったらありゃしないんだから。どうしたのよ？ってまぁ、だいたい予想は付くけど」
やっぱり予想付いてんじゃん。
和の恐るべき洞察力に感心しながら俺は何も言えずに壁に凭れていた。
「大丈夫ですよ。おじさんも一緒に付いて行ってるんですし、何かあったら直ぐに連絡しろって言ってますから」
そう言って優しい眼差しを向ける和を直視出来なくて、小さく頷くのが精一杯だった。
「潤くんは優し過ぎるんだから。ちゃんと翔ちゃんにもその優しさは伝わってるから。だから、そんな顔しないの」
子供に言い聞かせている様に優しい声で、肩に手を置かれ、顔を上げれば和が大きく首を縦に振る。
「美味しい料理でも作っておじさん達が帰って来るのを待ちましょ！さぁ料理隊長、お願いしますよ」
いつ持ってきたのか、和の手には俺のエプロンが握られていた。
「じゃあ、和も手伝ってよ」
エプロンを身に付け下に降りると、和と目を合わせてキッチンで嬉しそうに笑ってる雅紀。
黙ってシンクを覗けば、卵の殻やらの残骸が散らばっている。
「雅紀ってば、いつも言ってんじゃん。ここはゴミ箱じゃねぇんだからって」
「ごめんごめん、つい。さ、松潤も来た事だしニノも手伝ってよ〜」
サラリと話題をすり替えた雅紀に俺も和も優しい笑みを浮かべた。
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作者名：未翔
| 作成日時：2020年3月8日 20時
