142 叶えられた夢。 ページ40
side.A
この先の進路というか就職先が決まっている俺ははっきり言って去年の秋からバスケの練習しかしていない。
もちろんプロになる訳だから練習はいつも以上にハードだし辛いっちゃ辛いけど、バスケが好きだという根底が覆らない限り楽しい事に変わりない。
毎日の殆どを体育館で過ごして家に帰って来たら皆んなで他愛も無い話をしてご飯を食べる。そんな日常が堪らなく幸せだ。
でも俺は何となく気付いてる。翔ちゃんがこの生活に終止符を打ちたがっていることに。
そして大ちゃんがそれを黙認している事も。
そんな事もあってかニノと松潤はあからさまに二人を説得しようと動き出している。
「で、どうなの？」
「ダメですね。大野さんは完全に納得してるとは思えないけど動くつもりも無さそうです」
「ふーん、そっか」
ギロっとニノが俺を睨む。
わざと冷たい態度を取ったわけではないけど、俺はニノと松潤が説得して翔ちゃんや大ちゃんの気持ちが変わるとは思えなかった。
そういう所に関してはまだ子供だな、なんて言ったら怒られるんだろうけど何故か俯瞰的に見ることが出来ていた。
「ね、翔ちゃんの誕生日どうする？」
「今年はなぁ…潤くんもそれどころじゃなさそうっていうか」
「はぁ…もう。いつまで言ってんの？」
俯瞰的に見れていると言いながら直ぐに口を挟んでしまう俺はやはりコイツらに甘い。
ギュっと口を結んで俺を見るニノの目は昔と変わらない幼さが滲み出ている。
「それとこれは別。翔ちゃんが記念日とか大切にしてるの知ってるでしょ？だから誕生日は何があっても精一杯お祝いしてあげようよ」
「ね？」とニノの顔を覗き込めば何度か小刻みに頷いて「そうですね」と笑った。
きっとニノの思いは翔ちゃんに届く日が来ると信じている。説得で翔ちゃんが動くとは思えないけど、俺たちなら出来るかもしれない。
「松潤にも翔ちゃんの好きな物たーんと作ってもらお。翔ちゃん喜ぶよ」
「ですね。それにプレゼント買いに行かないとだな、相葉さんもう決めてるの？」
「あー決まってるよ。翔ちゃんが絶対喜ぶやつ」
「やけに自信があるんですね？」
「うるさいなぁ。ホントに自信あんだから」
自信だけはある。ニノには茶化されたけど翔ちゃんは必ず喜んでくれると思う。
だって翔ちゃんがずっと望んでいてくれた事だから。俺の夢が叶ったのは翔ちゃんのお陰だから。
「ちゃんとユニホーム取れたよ、翔ちゃん」
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作者名：未翔
| 作成日時：2020年3月8日 20時
