51 夕日に満ちた空。 ページ21
side.S
「翔ちゃん」
避けていたここ数日も幾度と無く呼ばれてきた名前。
それでもやっぱり和にそう呼ばれる事が嬉しいことに変わりはなかった。
「俺は離れないよ。
たとえ翔ちゃんに嫌われても恨まれても憎まれても。絶対翔ちゃんから離れないですから。 だから全部話して下さい。隠し事なんて許しませんから」
心が揺れるはずないのに、
否、揺れてはいけないのにまた和の優しさに甘えてしまいそうになる俺自身が怖かった。
完璧を貫くと決めたのに弱い弱い自分が嫌になった。
視界がぼやけて涙が零れそうになった。
そんな涙だけは和に見られたくなくて必死に誤魔化した、つもりだった…
まさかそのまま倒れるなんて思わなかったけど。
まぁ最近は食事もまともに取ってなかったし当然といえば当然の結果だ。
抱きとめられる感覚はあった。
そしてそれが和だということも理解出来た。
でも俺の記憶はそこで途切れた。
だから和があの傷を目にしていることには気が付かなかった。
「後でお礼伝えときなさい。
二宮くん一人でここまで運んで来てくれたんだから」
「はい…」
俺の頬を触り軽く手を当てるとまた顔を覗き込んできた。
「今はもう大丈夫そうね。そろそろ帰る？」
「はい、そうします」
このままここに居ても仕方ない今日は直ぐに帰ることにした。
まだ外は明るくて帰宅には随分と早いが、毎日部活に通う俺にとっては新鮮な気分だった。
まだ暗くなる前の空は月も出てない。
夕日に満たされた空だった。
そんな景色に浸りながらも変わらないものもあったと気付かされた。
まぁそんな明るい気持ちでいられるのも少しの時間だけなんだけど。
そして、この時俺は本当の意味で心が決まった。
「もしもし和。今、大丈夫？」
『…翔ちゃん、うん大丈夫だけど、』
緊張していないと言えば嘘になるが、取り敢えず電話に出てくれたことにホッとした。
「明日の12時にいつものとこで会えない？
話したいことがあって、」
『あっ、…大丈夫です、俺も話したいことが…』
「うん分かった、じゃあ明日…」
思っていたよりスムーズに行われた会話。
飾らない俺たちらしさだったかもしれない。
でもこの時、俺はこの明日を一生後悔する日になるとは思ってもいなかった。
俺の運命を覆す日になるとは。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 303人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未翔(プロフ) - 櫻華さん» 感想、ありがとうございます！更新はスローペースとなるかもしれませんが、出来る限りしたいと思っておりますのでこれからも宜しくお願いします。 (2019年3月9日 23時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(プロフ) - 移行、おめでとうございます。駆け足になってしまいましたが拝読しました。2人の…特に翔さんの心のうちに何があったのか気になります。それを知っての二宮さんの行動も今からドキドキしています^^* (2019年3月9日 23時) (レス) id: 643a141105 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2019年3月9日 20時
