50 完璧を突き通す。 ページ20
side.S
何も分からないまま声だけが聞こえる。
そんな時間がとてつもなく長く感じた。
誰が話しているかも分からないし、もしかしたら誰も話なんてしていないのかもしれない。
でも頬に当たる感触から何となく今までの流れを思い出すことが出来た。
ようやく重たい瞼が上がり目を開ければ想像通り保健室だった。
「大丈夫？」
俺の近くに居るのは養護教諭の南方先生。
心配そうに俺の顔を覗き込んで少し怒った様な表情をした。
「さっきまで二宮くんが居たんだけどね、私が無理やり帰したの」
「そう、ですか」
「貴方ちゃんと食べてるの？
随分痩せてるようだけど…」
「食べてますよ。
最近はちょっと絞ろうかなぁって。
でも痩せてるように見えるなら成功ですね」
聞かれることは覚悟していたから返答に困る事はなかった。
まぁ相手は養護教諭なのだからこの返しに違和感を持つことはあるかもしれないが、今はそんな事はどうでもいい。
簡単過ぎる嘘をつくのにもそれなりの理由はある。
まぁバレたら困るっていうのが一番にあるんだけど、自分を誤魔化す為でもあった。
遡れば2週間前、和の家を飛び出てきたあの日からもうそれほど時が経っていた。
和の家を飛び出して自分の家に着いた時、ポストに入っていたのはまさかの脅迫文。
これまでもメールは幾度となく届いていたが、自分の家に届いただけでこんなにも体が震えるとは思わなかった。
あぁ、これは本気なんだ。
そう思わざる負えなかった。
今までにも頭を過ぎったことは何度かあったが、ここまで追い込まれて真剣に考えたのはこの日が初めてだった。
でも考えられるのはあの女、宮本さゆり。
そして考えられる理由はやっぱり和。
もうこうなったら俺も全てを捨てるつもりで挑まなければいけないと、本気でそう思った。
やるからには完璧に。
中途半端には出来ない。
和を避けるなんて俺にとっては哀しみしかなくて、それでもやり続けるのは大事な人を守りたいからで。
でも何も変わらなかったんだ。
それで分かった。
これだけじゃ駄目なんだ、
俺が消えないと意味がないって。
だから俺は自分で自分を傷付けることを選んだ。
まぁそんな行為に慣れている自分にも驚いたけど、和が突然話しかけてきたことにはもっと驚いた。
あんなに嫌という程、避けているのに変わらず優しい和に心が締め付けられた。
だから名前を呼ばれた時、立ち止まってしまった。
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未翔(プロフ) - 櫻華さん» 感想、ありがとうございます！更新はスローペースとなるかもしれませんが、出来る限りしたいと思っておりますのでこれからも宜しくお願いします。 (2019年3月9日 23時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(プロフ) - 移行、おめでとうございます。駆け足になってしまいましたが拝読しました。2人の…特に翔さんの心のうちに何があったのか気になります。それを知っての二宮さんの行動も今からドキドキしています^^* (2019年3月9日 23時) (レス) id: 643a141105 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔 | 作成日時：2019年3月9日 20時
