48 不器用なマグ。 ページ18
side.N
翔ちゃんが出て行って、追いかけることも出来なかった俺は本当に馬鹿だった。
今のはどう考えても俺が悪いのに。
頼って貰おうにもあんな言い方しか出来ない奴に相談なんかできないだろう。
でも、そんな事にも気付くのが遅かった。
もっと落ち着いて冷静に話し合えたら…
何度そう考えてもやり直しは効かない。
連絡が入っていないかと携帯を確認するも案の定、翔ちゃんからの連絡は一切なかった。
何も言わずに飛び出してしまった翔ちゃんにせめて謝罪だけでもしたい。
そしてもう一度二人の将来をちゃんと考えたい。
翔ちゃんの悩みを背負いたい、救いたい。
夕食終わりのいつものティータイム。
そんな穏やかな時間がこんなにも、気不味くなったのは初めてだった。
俺と翔ちゃんは出会ってから付き合い出すまでの期間は本当に短かった。
だからこそ今までこんな雰囲気になることもなかった。
お互いを知らなさ過ぎた結果かもしれない。
俺は勿論、誰よりも翔ちゃんのことを知っていると自負している。
でもそれは、物理的なことで本質的なことは何も分かっていなかった。
それが悔しくて情けなくて、
普段と変わらぬ珈琲もやけに苦く思えた。
翔ちゃんが居ないこのリビングも勿論時間が流れている訳で、何だか虚しくなった。
まるでいつかのあの日のようだった。
翔ちゃんに夕飯は要らないと連絡が入り一人でご飯を食べていたあの日は妙に寂しかった。
ふと思い出した俺は、キッチンに入り戸棚を開ける。
幾つものヒビが入った不器用なマグカップ。
割れてしまったマグカップでも破片さえあればと暫く格闘して修復した。
でも結局は形だけで実際に使うことは出来ないのだけれど。
それでも捨てずにとってあるのは怖かったから。
不吉な事だと思ったが、それを捨ててしまう方がもっと不吉な事が起こりそうな気がしたから。
気持ちの問題かもしれない、
考えすぎかもしれない。
でも今の俺にはそんな小さな不安すらも怖かったんだ。
今更ながら後悔に負けて、
もう一度携帯を開きあの人に電話を描ける。
呼び出し音だけがずっと繰り返される。
やっぱり今は出てくれないか、そう簡単に諦めてしまった。
何度も何度も翔ちゃんが出るまで電話を掛け続けるべきだった。
否、本当は翔ちゃんをすぐに追いかけるべきだったんだ。
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未翔(プロフ) - 櫻華さん» 感想、ありがとうございます！更新はスローペースとなるかもしれませんが、出来る限りしたいと思っておりますのでこれからも宜しくお願いします。 (2019年3月9日 23時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(プロフ) - 移行、おめでとうございます。駆け足になってしまいましたが拝読しました。2人の…特に翔さんの心のうちに何があったのか気になります。それを知っての二宮さんの行動も今からドキドキしています^^* (2019年3月9日 23時) (レス) id: 643a141105 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年3月9日 20時
