42 聞かない優しさ。 ページ12
side.N
俺の携帯が鳴ったのは、ちょうど夜ご飯を作っている時だった。
＿＿和、ごめん。今日は遅くなるので夜ご飯大丈夫です。
初めてのことではなかった。
でも俺の中で確かなざわめきを感じた。
了解、と適当な柄のスタンプを選択し送信する。
理由なんて聞いたりはしない。
付き合っているとはいえ、聞かれたくない事の一つや二つはある。
信頼関係という課題においてはクリア出来ていないかもしれないが、その事よりも聞かない優しさもあると思っている。
既に作り始めていた料理。
途中で止める訳にもいかないし、まず俺自身の飯もないから、料理を再開する。
「今日は翔ちゃんの好きなビーフシチューだったんだけどなぁ」
俺の小さな独り言は誰に聞こえるわけでもなく、虚しくキッチンに揺らめいた。
いつも２人で話したりテレビを見ながら囲んでいたテーブルは１人で囲むには寂しすぎた。
ついこの前まではこれが日常だったというのに。
翔ちゃんと過ごす時間はとてつもなく長く感じていることを身をもって知った。
静か過ぎるリビングを見渡せば、
辺りに感じる翔ちゃんの影。
「なに別れたみたいなこと想像してんだ、俺」
途端に悲しくなって自傷気味に呟いた。
可笑しいと笑えたらどんなによかっただろう。
でも笑えないほど、この部屋の空気は翔ちゃんで溢れているんだ。
それがどれほどの幸せであるかを俺は知っているから。
「……翔ちゃん。ダメだね、俺」
人間というのは一度転んでもまた立ち上がり歩くことが出来る。
でも、、もし立ち上がれない程の怪我をおったとしたら？
人間は弱い。
でも強いと信じたがる。
それが立ち上がる為に必要なことなんだ。
「コーヒーでも………あっ！」
でも１人でなんて無理なことなのかも。
「………割れちゃったか」
例え小さな傷でもそれが致命傷になることもあるんだ。
俺の手から滑り落ちたマグカップは小さなヒビが入った。
まだ割れていないと、そう思ってマグを拾い上げようとした。
でも触れただけで、マグは割れてしまった。
＿＿＿小さなヒビが大損傷を招くこともある。
聞かない優しさが俺の愚かさだと思い知るのはまだ先のことだ。
この時はまだ信じていたから。
翔ちゃんとの未来を。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 303人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未翔(プロフ) - 櫻華さん» 感想、ありがとうございます！更新はスローペースとなるかもしれませんが、出来る限りしたいと思っておりますのでこれからも宜しくお願いします。 (2019年3月9日 23時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(プロフ) - 移行、おめでとうございます。駆け足になってしまいましたが拝読しました。2人の…特に翔さんの心のうちに何があったのか気になります。それを知っての二宮さんの行動も今からドキドキしています^^* (2019年3月9日 23時) (レス) id: 643a141105 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2019年3月9日 20時
