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鴨志田は彼らの顔を見回す。
全員が子飼いの部下たち、この計画の共犯者だった。
この営業所の所長である猿渡が、作戦決行日である今日、この男たちが勤務するように調整していた。
「これから美術品を全て搬送する。エレベーターで地下駐車場に運び、そこから警備車両で運び出すぞ。社長、それではお願いいたします」
鴨志田が促すと、東海は隣に立つ中年のキュレーターに訴えかけるような視線を向ける。
キュレーターは無言のまま首を縦に振った。
巨大な扉に近づいた東海は、その脇にあるカメラを覗き込む。
軽い電子音が響き、網膜スキャンが行われた。
続いて東海ら手元を隠すようにしながら、パネルに暗証番号を打ち込んでいく。
錠が外れる重い音が響いた。
……成功だ。
巨大な扉が滑るように開いていくのを眺めながら、鴨志田は感動を噛み締めていた。
これまでの苦労がようやく実る時がきた。
喉元まで出かかった歓喜の雄叫びを必死に飲み下しながら、鴨志田は猿渡とともにスーツの懐に手を忍ばせた。
「開いたぞ、早く運び出してくれ」
東海が小走りに戻ってきて、
２人のキュレーターと女のそばに立つ。
鴨志田はゆっくりと懐から手を抜いた。
「ありがとうございます、社長。全部計画通りにいきました」
鴨志田は微笑むと、
リボルバー式の拳銃を東海に向けた。
隣では、猿渡がキュレーターたちに銃口を向けていた。
「なっ?!どういう事だ、常務」
「見た通りですよ、社長。俺たちは日本セキュリティ保障を退職させて頂きます。ああ、退職金はあの金庫の中身でいいですよ」
鴨志田はおどける。
東海の顔からみるみるうちに血の気が引いていった。
「爆弾は……でたらめなのか？」
「いえ、ちゃんと隣の備品室にありますよ。まだタイマーをセットしていないので、持ち運び出来る状態ですけどね」
鴨志田は唇の端を上げる。
「まさか、連続ビル爆破も君たちが?!こんなことやめるんだ。君たちが消えたあと通報すれば、警察がすぐにやってきて追跡するぞ」
東海のセリフを聞いた鴨志田と猿渡は、一瞬顔を見合わせると同時に吹き出した。
「社長、あなたは通報なんて出来ないんですよ。この後、あなた方は爆弾と一緒に金庫室で粉々になるんだから」
鴨志田は顎を引くと、上目遣いひ東海を見る。
恐怖に歪んでいく東海の顔が嗜虐心をうずかせた。
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作者名：未翔
| 作成日時：2023年8月9日 21時
