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二宮は一瞬に体を硬直させると、恐る恐る視線をはぐみに向けた。
二宮の目が大きく見開かれていく。
「行ってきます。二宮先生……また」
はぐみは白い手を差し出してきた。
二宮は小さく息を吐くと、
微笑みながらその手を握りしめた。
「うん、またね。はぐみさん」
二人の手が離れる。
はぐみはどこから名残惜しそうに身を翻すと、パトカーの後部座席に乗り込んだ。
エンジン音が響き、パトカーが発車する。
リアウィンドウの奥のはぐみが振り返り、小さく手を振る。
二宮も手を振り返しながら、はぐみを見送り続けた。
「行っちゃったね」
唐突に背後から声がかけられる。
慌てて振り返ると、いつの間にかすぐ背後に雅紀が立っていた。
「無言で人の真後ろに立たないでよ。びっくりするじゃないですか」
「ごめんごめん。でもそんな事より、何かいい感じだったじゃん。この色男」
雅紀が肘で脇腹をつついてくる。
「なんの事ですか」
「分かってるくせして。なに、にのちゃんもしかして、来年にはパパになっちゃうの？こんな中学生みたいなふりして、子供出来ちゃうわけ？じゃあ俺、にのちゃんの子供になる子、取り上げることになるんだ。うわっ、何か変な感じ」
「何勝手に盛り上がってるんですか。別に、何にも話していませんよ」
二宮がかぶりを振ると、
雅紀がいやらしい笑みを浮かべる。
『話してなくても、あんたなら顔見ただけではぐみさんの気持ち、分かるでしょ』
二宮は雅紀の表情から、考えていることを読み取ってしまう。
「うるさいなぁ」
二宮は大股で喫茶梓の入口に向かった。
「あれぇ、俺は何にも言ってないよ。にのちゃんが勝手に心を読んだだけじゃん。けど、あんまり焦っちゃダメだからね。はぐみさんはまだご家族を亡くしたばかりなんだから、最初はがっつかないで、支えてあげないと。血が繋がっていなくても、子供を可愛がってくれるってところを見せれば、きっと上手くいくから。あっ、でもにのちゃんがはぐみさんとくっついたら、潤ちゃんが嫉妬するかも」
「しないよ！」
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作者名：未翔
| 作成日時：2023年8月9日 21時
