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「2人は外に出ていてくれ」
「ちょっと大ちゃん。それはないんじゃない。俺たちだけ仲間外れなわけ？」
「仲間外れなんかじゃない。相葉ちゃんは奈美を説得して、安全な場所まで離れさせてくれ。あいつ、俺から言ってもなかなか聞いてくれないからさ」
説得された雅紀は、硬い表情を浮かべたまま数秒考え込んだあと、「絶対に無事に帰って来てよ」と言って別荘から出て行った。
「ほら、翔くんも」
大野に促された櫻井は奥歯を食いしばる。
本当なら、大野に言われた通りに、今すぐにでも安全な場所に避難したかった。
しかし、なぜか足が動かなかった。
代わりに櫻井はズボンのポケットからスマートフォンを取り出す。
「俺は残ります」
櫻井は無理やり笑顔を作る。
倉田に殴られた頬が痛んだ。
「お二人はこれから手が離せなくなる。その間、二宮先生と連絡を取る役目が必要でしょ」
「……いいのか？」
大野の問いに、櫻井は動きの悪くなった首関節を強引に動かして頷く。
「爆発させたりはしないって、信頼していますよ」
大野はニヒルな笑みを浮かべると、ジャケットの内ポケットから幾つかの工具を取り出した。
「松潤、はじめるぞ」
「……まずはジャイロスコープを取り外す。一番上に見える赤い配線を露出させ、電流のバイパスを作ろう」
松本が指示を出すと、両手に工具を持った大野が険しい表情で爆破装置の解体を開始する。
櫻井は少し離れた位置で、息を殺してその光景を眺めていた。
やがて箱から小さな機器が少しずつ取り外されはじめる。
櫻井はスマートフォンの履歴から二宮の電話番号を選ぶと、通話ボタンを押した。
呼び出し音が聞こえてくるが、二宮が電話に出ることはなかった。
何やってるんだよ、あの人。
もしかしたら、はぐみに追いつくことすら出来ていないのかもしれない。
二宮の体力なら有り得ることだった。
本当に大丈夫なのだろうか、不安を覚えながらカウントダウンを続けるタイマーを眺める。
爆発までの時間はすでに40分を切っていた。
ゆっくりと、しかし確実に大野と松本は解体作業を進めていく。
その間、櫻井は何度も電話をかけたが、二宮が出ることは一度もなかった。
「……俺が教わったのはここまでだ」
解体をはじめて20分以上経ったところで、松本が陰鬱な声で言う。
手を止めた大野は大きく息を吐くと、額に浮かんだ汗を拭った。
櫻井は恐る恐る近づいて、黒い箱を覗き込んだ。
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作者名：未翔
| 作成日時：2023年8月9日 21時
