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大野は「梅沢社長！」と一喝する。
「わ、分かったよ。助けてくれたら警察に行って正直に話す！全部罪は償う！だから助けてくれ！」
梅沢は両手で頭を抱えた。
「ねぇはぐみちゃん、梅沢社長は俺たちが確実に自首させる。秘書の子にも証言してもらって、しっかり罪を償わせる。それで許してあげない？」
諭すような口調で雅紀が言う。
「死刑になるんですか……？」
はぐみはぼそりと呟いた。
雅紀が「え？」と聞き返す。
「私の家族を2人とも殺したその男は、死刑になるんですか」
顔を上げたはぐみに睨みつけられ、雅紀は硬い表情で黙り込む。
「私はその男のせいで、生きる理由を全て奪われたんです。自分の命以外でどうやってその罪を償うっていうんですか！」
「はぐみちゃん、ちょっと話を……」
「黙ってください！」
はぐみは叫ぶように言う。
「その爆弾は絶対に解除出来ません。だから、皆さんはここから出て行ってください。皆さんには感謝しているんです。巻き込みたくありません。でも、どうしても邪魔をするっていうなら……」
はぐみは室内にいるクリニックのスタッフたちを順番に見回していく。
この人は本気だ。
入口の傍で立ち尽くしている櫻井は確信する。
はぐみの全身には強い決意がみなぎっていた。
「はぐみさん」
大野が落ち着いた口調で言う。
「俺たちはここから逃げたりはしません。梅沢社長は私たちのクライアントですし、何より……大事な患者であるあなたに、人を殺させたくはない」
「ならどうしようっていうんですか？私を拷問でもして、その爆弾の解体方法でも喋らせようっていうんですか？」
はぐみは噛みつくように言う。
大野は首を左右に振った。
「そんな事はしません。ただ、落ち着いて話を聞いて欲しいだけです」
「……そんな必要はありません」
はぐみは振り返り背後の窓を開く。
冷たい風とともに白い雪が、勢いよく室内に吹き込んでくる。
顔の前に手をやる櫻井たちが見ている前で、
はぐみは窓枠を超えて外へ出た。
「あっ、はぐみちゃん！」
雅紀が小走りに窓に近づき、窓枠を乗り越えようとする。
「相葉さん、待って！」
二宮の声に、雅紀は動きを止めて振り返った。
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作者名：未翔
| 作成日時：2023年8月9日 21時
